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「最初はラッキーって思ったけど。
私、半端ないくらい場違いじゃない?
ねえ? 妖精さん」
ふかふかベッドに突っ伏してもごもご喋る。
普通だったら、はい?って聞き返したくなるくらい聞こえにくい。
『そうだな』
「もしかしてアーサーの嫌がらせ!?
貧民と貴族の違いを肌で味あわせて絶望させたかったんだー!
自分が卑しい存在だって再認識させたかったんだあー!!」
うつ伏せのまま、両手両足でベッドを叩く。
暴れる彼女をベッドは優しく受け止める。
『クリス、悲観的になりすぎじゃないか?
アイツにもどうしてもクリスを引き止めたい理由があるんだろう』
「何?
理由って?」
『知るか』
「・・・・・そうよねぇ、もう寝よ」
彼女は仰向けに直り、ふっかふかの掛け布団に潜り込んだ。
───その日、すっごく良くよく眠れた。
それから二十日間の彼女はというと。
たまに外で寝てみたり。
恥を捨てて自室の中、大声で歌ってみたり。
お高くない、貴族の方風に言うと庶民の食事を提供してもらったり。
おかげで変な目で見られたりしたけど、思ったより楽しい二十日間になった。
「やははぁぁ〜!!
やぁっと終わったあーー!!
よぉうやく二十日たったあーー!!
これで大会優勝してー、お金持ちになってー!
ようやく私の旅ははじまるのーー!」
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