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3話 都合のいい話
白銀の美しい装飾が施された短剣を懐から抜く。
姿勢を少し低くして彼女を目に駆け出す。
「短剣・・・!
リーチだけならこっちの方が有利ね。
とくと見なさい!
妖精さんソードを!」
彼女は正面に両手を突き出す。
そして願う。
────この手に剣を!
赤黒く辺りが輝く。
光はまるで彼女の手中に吸い込まれるようにして収束する。
光は彼女が望む剣へと形取り、顕現する。
彼女の手に握られたのは、何にも染ることのない純白の剣が。
しかして、柄と刃の中央は、ほのかに赤黒く光を灯す。
アーサーは驚いてはいるものの、少しも動きが乱れることはなかった。
しっかりと、正面で攻撃を受け止める。
攻撃は軽く、力負けするようなものじゃなかった。
しかし。
「っ! 速っ・・!」
捌ききるのが難しいほどの連撃。
反撃の隙が見当たらず、防戦を強いられる。
(くっそぉ、リーチの問題じゃないじゃない!
一度距離をとってから・・!)
ここまで近づかれては、何もできはしない。
何とかして距離をとる。
とろうとして後ろに下がる。
が、
「逃がすか!!」
アーサーは空いていた左手を彼女の方へ向ける。
そしてその手からは驚くべきものが。
赤くて、明るくて、それでいて触れたら燃えてしまいそうな。
そう、炎。
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