3話 都合のいい話

4/11
33人が本棚に入れています
本棚に追加
/258ページ
『──────クリス!!! お前ってやつは!! そこまで馬鹿だったのか!?』 「うわっ!??」 頭の中で大声を出され、くらくらする。 これのおかげでようやく意識が鮮明になる。 『大会で一攫千金〜とか言い出した時点で怪しいと思ったが、まさかここまで馬鹿だと思わないだろ!? 負けた時どうするか、とか。 勝てる保証はあるのか、とか。 考えてたか? これからどうするつもりだ!? ああ?』 怒鳴り声は彼女にしか聞こえないが、外に漏れるようなものであれば、医務室を飛び越え、外まで届いていただろう。 それ程の怒鳴り声。 そして妖精は心の中で誓った。 彼女を見守っておくなど良くなかったと。 自分が正しく引っ張ってやらねば、と。 「う、ううるさいわね! 考えてなかったわよ! だって、勝てるって思ってたもん!! それに妖精さんだって、もっと早く教えてくれればよかったじゃない!」 布団に顔をうずくめる。 泣いているのか、うえうえと嗚咽を漏らす。 妖精は慰めるどころかため息ついて呆れている。 『そんぐらい自分で考えなきゃ駄目だろ。 まあ?盗賊団でぬくぬく外の世界のこと何も知らずに育ち、十六になってちょーっと仕事手伝ったくらいで調子に乗って。 そんな調子者に分かるわけないな。 まず闘技なんてクリスには早かったんだ』
/258ページ

最初のコメントを投稿しよう!