3話 都合のいい話

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「早く準備しな。 それとも一文無しのクリスさんは手ぶらで準備万端なのか?」 「うるさいわね! そうよ!」 前言撤回。 レディに向かってなによこの人。 「ならさっさと行こうぜ。」 アーサーは出口を抜ける。 「ちょっと待ってー。 私お腹すいたんだけどー!」 気だるそうに追いかける。 彼女はようやく旅のスタートラインに立つ。 (こころざし)は違えど一人の仲間と共に一歩目を踏み出す。 「でもやっぱりいいのかなぁ。 私の目的は復讐なのに。 たとえ彼がちょー強かったって付き合わせるのはなんか悪いな」 先を行くアーサーには聞こえないくらいの声で言う。 彼女は少ーしだけアーサーの同行に負い目を感じているのだ。 『断ることもできないし仕方ないだろ。 二十日も養ってもらった上に、旅の資金だってくれたんだぞ?』 「そんなんだけど・・・」 『それに大会優勝した実力者だ。 道中心配もいらない』 「うーん、でも確かにそうかも。 魔物に襲われたとしても安心できるし」 魔物。 それは死した神々の魂が(けが)れ、悪しき命として再びこの世に芽吹いた姿だと言われる生命。 身体能力は人間の二倍から十倍程。 とても獰猛で、人間とは相容れない存在。
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