1話 少女の旅立ち

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「そうよねぇ。 親の顔が見てみたいわ」 クリスはからかうように、ため息混じりにそう言った。 そしてちろりと頭の表情を物色するように見る。 「お、お前な! ほんっと生意気に・・!」 言いかけた時だった。 「頭ぁ!!!」 後方から声がした。 何かに恐怖し、助けを求めるような声。 その声は寝起きの彼女をしかと目覚めさせる。 「どうした!?」 頭の声に緊張が走る。 聞かなくとも分かる。 緊急事態だ。 「アジトが!襲撃を受けていますっ!! おそらく、ベリアル私兵団かと思われます!」 ベリアル。 その名が仲間の口から出た瞬間から、凍ってしまったかのように、そう思えてしまうくらい空気は張り詰めた。 「え・・? ベリアル・・・? 誰・・?」 ちょっぴり世間知らずなクリス。 張り詰めた空気を僅かにだが和ます。 彼女は頭に助けを求めるように、その者のことを問うた。 「・・・・ベリアルは凄腕の傭兵の名だ。 失敗した仕事はないと言われるくらいにな。 ベリアル私兵団は、そのベリアルが傭兵を辞め、騎士崩れを(つの)り結成された」 淡々と話しながら、頭は武器が詰め込まれた樽の中から、中ぶりの斧を手に取った。 斧はきちんと手入れがされておらず、濁りきった銀灰色をしている。 「貴族から下民まで、色んな奴らの頼みごとを聞いては大界中を旅してるんだとさ」 頭の言葉に皮肉を込めて口にした。
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