1話 少女の旅立ち

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しかし突然起こる地響きに、斬り掛かった兵士の剣は少女に届くことなくバランスを崩し倒れる。 「なんだ急に!? 何をした!!?」 私兵は慌てふためき、怯えた目で少女を見る。 「ん、いいや? 手を着いただけだが」 地響きは遂に洞窟内に影響を及ぼし、崩れ始める。 「崩れるぞ!! 急げ!!」 慌て逃げる兵士たち。 その中で彼は、一度足を止め少女に向かい振り返る。 「どうした? 早く逃げねば潰れ死ぬぞ?」 少女は笑っていた。 彼には何がおかしいのか分からなった。 「はあ・・・・。 なんとか間に合ったな・・・」 私兵団は九死に一生を得ていた。 「犠牲は?」 重く芯のある声。 髭の生い茂った中年男性。 この男こそ私兵団の団長、ベリアル。 「ゼロっすね。 手足を負傷してる奴は結構いるけど、どれも死に直結するようなもんじゃないっすよ」 狙撃手、メルトは息を整えながらそう言った。 「そうか、ありがとなメルト。 グリム、怪我人治してやれ。 って、お前・・・」 彼の背には、討伐対象の一人の盗賊が力なく伏せっていた。 まだ息はある。 「ごめん、ベリアル。 駄目・・・だったか?」 ベリアルは呆れた顔をしている。 彼は送っていた視線を逸らした。 「・・・はぁ、そいつ治したら、すぐ団の奴らも頼むぞ? みんなお前を頼りにしてるんだからよ」
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