第一章

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第一章

「こんな美味しくないもの、食べられないわ!」 朝から西銘家には美しい少女の声が響く。 「申し訳ありません 新しいものをお持ち致します」 床に額がつくほど頭を下げた少女が立ち上がり、調理場に料理を取りに戻ろうとすると、嘲笑うような声と共にクスクスと笑う夫人の声がした。 使用人たちは、いつものがまた始まったというように姉妹を見る。 そう。 彼女たちはなのだ。 片や名家の令嬢らしく、片や使用人のように扱われている。 この家がここまで歪んでいるのは、西銘家当主・浚の愛情の差だろう。 政略結婚をした正妻である美桜との子供である響華と、愛人であった愛しの鈴音との子供である鈴華。 彼は響華のことを娘と思っていない訳では無い。 美桜が生きている時は響華にもきちんと娘として接していた上に、今でも屋敷には置いているのだ。 しかし、美桜が亡くなり鈴音が妻となった今、屋敷では美桜に似た響華を嫌っている鈴音に影響されるように鈴華の侍女のように扱うようになっていた。 見て見ぬふりをする父、幼い頃から家族とみなさない義母と異母妹。 母である美桜を失った響華は、家に居場所など無かった。
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