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第三章
目を開けた響華の視界には見慣れない天井が広がる。
「ん……?」
響華は起き上がり、自分に男物の上等な羽織がかけられていることに驚く。
窓の外を見ると、もう太陽は昇り始めていた。
響華は布団に入った記憶がなく、しばらく思考を巡らせて1つの考えに思いいたり、部屋を出て台所に行くとそこには既に花がいて朝食の準備をしていた。
「お花さん。おはようございます 」
「響華様。おはようございます。お早いですねぇ 」
「えぇ。…あの!旦那様にお弁当を作ってもいいですか?」
響華が恐る恐る聞くと、
「もちろんです。麗人様、喜びますよ 」と言う花からの返事に響華はそっとして肩の力を抜く。
そして早速響華は、麗人のお弁当を作り始めた。
「ありがとうございます 」
「ん?」
朝食の席で突然、自分のことを真っ直ぐ見ながら感謝の言葉を放った響華に麗人は首を傾げる。
「布団まで運んで羽織をかけてくださったのは旦那様ですよね?」
「あぁ。そのことか 」
「ありがとうございます。お礼にならないかもしれませんが、お弁当を作りました。無理にとはいいません。…受け取って頂けますか…?」
「もらおう 」
お礼と言っているが、西銘家に言われて毒が入っているかもしれない。そう思ったが、響華に少し興味を持っていた麗人は素直にお弁当を受け取った。
麗人を見送った響華は、花に声をかけてから部屋に引きこもり昨夜の残りの着物を仕立てていた。
「響華様。お昼ですよ 」
しばらく経つと花の声が扉の向こうから聞こえる。
「はい 」
「響華様はお裁縫がとてもお上手なんですねぇ 」
部屋に入ってきた花は響華の隣にある仕立てられた着物をみてそう言った。
「ありがとうございます 」
花が持ってきてくれたお昼を受け取り、食べ始めた響華だが、元々一日一食しかまともに食べていなかったこともあり、食べきることが出来なかった。
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