プロローグ

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私はこれ以上話すとボロが出そうだったので曖昧に笑って見せた。 リナは私の両手を取って、額と額をくっつけた。 「熱い、歩いてきたの?」 リナの手に力が入る。 「うん」 私はなんでもないように答えた。 「体調は?」 「大丈夫。今日は気分も良いし」 「そっか」 「うん」 「何かあったら第二音楽室に来るんだよ」 「わかってる、ありがとう」 リナは私から離れると「よぉし、今日も頑張るか」と大きく伸びをした。 リナは小学校の時からの親友。 明るくて、可愛くて、元気で、ダンスも踊れて、私とは正反対。 だけど、いつも一番に私のこと心配してくれて、いつも一緒にいてくれる。家族と同じくらいかけがえのない大切な友達。 筆洗いに水を汲んでいると聞こえてくるトランペットの音色。 私は音楽のことなんてちっとも知らないけど、でも、どうしてだかリナの吹くトランペットはその力強さとは裏腹に泣いてるみたいにも聞こえるのだった。
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