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その通り。言い募るサキに無理やり言葉を重ねる。
「言いたいことがあるんなら俺じゃなく親父さんに直接言え」
「そんなの分かってます」
眉を吊り上げてぴしりと言い置いて背中を向けた。
(言えるのなら苦労はしない……!)
怒りか悔しさか分からない感情に涙まで浮かんできた。やり場のない感情に足元に視線を落として床をにらむ。
両手を拳に握った肩をぐっと後ろに引っ張られ――。
「――――!?」
気が付いたときには誰かの胸板――板というよりクッションのようにやわらかい――に頬を押し当てていた。
頭に血が上っていて事務所に人が入ってきたことにすら気づかなかった。
「諒、可愛いサキちゃんをいじめるんじゃねぇ」
見上げたのは熊――じゃなかったノブさん。
セクハラだと言いかけたが、大きな手で頭を撫でられたおかげで溢れかけた涙が引っ込んだのでやめた。
「サキちゃんの倍も長く生きてて女の子の接し方も分かんねぇのか?」
「生憎と胸も魅力もないヤツを女だとは思っていない、ミケはただの子供だ」
「もっと悪い」と睨み付けてサキを解放すると諒の向かい側に腰を落とした。
取り残されて戸惑うサキに手土産のドーナツを手渡すと笑顔で「独り占めしていいからな」と一声添えてくれる。
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