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ただいまケンカ中。もちろんそのつもりだ。
「――なんの用だ?」
目の前のやり取りをつまらなそうに眺めて鼻を鳴らす。
「随分な扱いだな。依頼だよ。お客様だ」
「ミケ。――塩」
糸のように目を細めてひんやりと追い返そうとする。
「やめんか、俺はナメクジじゃねぇ。「よろづ」に依頼したいことがあるって言ったろ? かわいい姪っ子がストーカー被害に遭ってるみたいなんだよ」
「ほう、犯人は熊か帳簿を持ったタヌキのコレクターか。奇特な趣味だ」
「阿呆。熊でもタヌキでもない。兄貴の再婚相手の子供だ」
悪意しかない諒のつぶやきにうんざりとため息をついた。
「春から上京してこっちの大学に通うようになったんだが、知らないヤツに呼び止められたり追いかけられたりして困ってるらしい」
「――――ふうん?」
考え込むような奇妙な間。
「ストーカーなら警察に相談した方がいいんじゃないですか?」
来客用の茶を手にしたサキも不穏な内容に口添えする。
「それは思った。けど困ったことに相手は一人じゃないんだと。かわいい子だから地元にいる時も男に追いかけられたことがあったらしい。けど複数から追われるのは初めてらしくってな。相談できる友達もまだいなくて怯えてる」
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