メロンパンとドッペルゲンガー

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 きっと帰り着いた諒に違いない。サキの雇用主は人使いが荒い。 「実は今日もアルバイトが入ってて……」  語尾を濁すサキに「頑張って」と綺麗な笑顔で見送られて別れた。 (どうせやることもないんだから、寄り道ぐらいいじゃない) ※  事務所に戻っていると思った諒はいなかった。 (メールはお父さんだったし。……この天気だから今日はもう店じまいして帰っちゃったのかも)  掃除をサボってもバレそうにないのだが、嫌味を言われそうでせっせと手を動かすことにする。  郵便物を机に置いて流しに置かれたままの湯呑を片づける。  水道の音で気づかなかったが、いつの間にか雨が騒がしく軒を叩いていた。  窓を振り返った刹那、埃っぽい室内に青白い光が走る。  一呼吸おいて窓を震わす轟音に身を縮めた。 「――――っ!」  思ったより近くて驚いて目を閉じる。頭を守るように両耳を塞ぐことも忘れない。けれど瞼を閉じても感じる光に鼓動が跳ね上がる。 (なんで、今……っ!)  雷様の都合は知らんが一人の時は止めてほしい。  (へそ)をとりに来る――は信じていないが身体を丸めてやり過ごす。
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