23人が本棚に入れています
本棚に追加
きっと帰り着いた諒に違いない。サキの雇用主は人使いが荒い。
「実は今日もアルバイトが入ってて……」
語尾を濁すサキに「頑張って」と綺麗な笑顔で見送られて別れた。
(どうせやることもないんだから、寄り道ぐらいいじゃない)
※
事務所に戻っていると思った諒はいなかった。
(メールはお父さんだったし。……この天気だから今日はもう店じまいして帰っちゃったのかも)
掃除をサボってもバレそうにないのだが、嫌味を言われそうでせっせと手を動かすことにする。
郵便物を机に置いて流しに置かれたままの湯呑を片づける。
水道の音で気づかなかったが、いつの間にか雨が騒がしく軒を叩いていた。
窓を振り返った刹那、埃っぽい室内に青白い光が走る。
一呼吸おいて窓を震わす轟音に身を縮めた。
「――――っ!」
思ったより近くて驚いて目を閉じる。頭を守るように両耳を塞ぐことも忘れない。けれど瞼を閉じても感じる光に鼓動が跳ね上がる。
(なんで、今……っ!)
雷様の都合は知らんが一人の時は止めてほしい。
臍をとりに来る――は信じていないが身体を丸めてやり過ごす。
最初のコメントを投稿しよう!