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――がたっ。
サキのすぐそばで建付けの悪い襖が音を立てて、背筋が冷えた。
「――――っ!?」
――ガリリ、ガッ
肝心な時に悲鳴は喉の奥で凍り付く。
繰り返されるひっかき音。怖いのに襖から目を逸らせない。
鋭く息を飲んだ視線の先でゆっくりと襖が滑り、隙間が広がった。
見えた襖の向こうに誰もいない。
(幽霊っ!?)
それだけは勘弁してほしい。
事務所から逃げ出したいが襖の前を通らねば出られない。雷のせいもあって震える足に力が入らない。
とっさににらんだ窓の外は降り続く白いすだれのような雨。
(なんで、こんな時にいないのよ!)
恐怖を越えて怒りに変わった感情に目を吊り上げた。
そんなサキの足を――暖かいものが撫でた。
「――――ぐっ!!」
哀れなカエルのような悲鳴に重なったのは、
「ミ゛ヤァ」
――どこかで聞いたダミ声。
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