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「は、はぁぁぁっ!?」
ようやく出た声は――ほぼ悲鳴。
力が抜けて床に縋りついていた。床に頬を押し当るサキの顔を撫でる――白地に茶色と黒のブチ模様。
「ぬぁに、してんのよっ」
渾身の怒りを向ける相手は――ヤマト。
雨の中、食べ物と温もりを探して忍び込んだに違いない。
目を吊り上げてにらみつけるが、どこ吹く風。
機嫌よく尻尾を立てて濁声の猫なで声ですり寄ってくる。
正体が分かってほっとするより無性に腹が立った。
みやぁ。
「みゃぁで分かるかっ!」
怒られた方もどうして怒られているのかきっと分かってない。
近づいてくる雷のような落ち着きの無い足音。
来客の予定はないが足があるので幽霊ではないだろう。
「ひっ……!」
さすがに湖沼からはいずり出してきたような姿に小さな悲鳴を上げた。
ずぶ濡れの幽霊――ではなく伸びきった髪の先から雫を垂らした諒。
(しかもお化けみたいに顔色も悪いし!)
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