メロンパンとドッペルゲンガー

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 やることもないので中身を確認すると――メロンパンが二つ。 「綾乃さんと会ったでしょ?」 「はぁ? んなわけないだろ――今日は別件の仕事だ」  着替えながら応じているのか、不自然にとぎれる返事にサキは口の端を引き下げた。 「だって相合傘で楽しそうでしたよ。メロンパンだって一緒に買いに行ったんでしょ?」 「なにが相合傘だ。依頼者と誤解されるようなことするわけがないだろ」  足元で鼻をひくつかせながらヤマトがサキに寄越せと詰め寄るのに首を振る。さすがに猫はメロンパンは食べないだろう。 「今日はこの間の依頼でノブさんの姪っ子に振り回された。で、それはノブさんからだ。俺が嫌いなのを知っててわざとメロンパンにしやがった」  不機嫌な顔で現れた諒は風呂上がりのようなスタイル。濡れた髪にタオルをひっかけた黒いTシャツとスエット姿。  いつものド派手な格好と違う姿に驚きながら予想外の名前に首を傾げた。 「ノブさん?」 「もう忘れたのか? 姪っ子の付き添いでボディガードの真似事やって来たんだよ。昼で終わりのはずが買い物に行きたいが店が分からんってゴネて振り回された。……どうして女の買い物は時間がかかるんだ? ほんっと疲れた」  言いたいことを言って諒はどっかりと定位置におさまった。
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