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「それってまるっきりデートじゃないですか?」
「阿呆。なにがデートだ。ただの荷物持ちだ。いいようにこき使われただけ。そんで、ついでの報酬がメロンパンだったってわけだ」
うんざりと答えて湿った髪をかき乱して茶を要求する。
「そういえば、どうしてメロンパンが嫌いなんですか?」
「あん?」
鼻息荒い文句を聞き流して茶の支度をしながら諒に問いかけた。
「――中身がない」
「は?」
「メロンパンは中身がないだろ」
「でも、そういうものですよね?」
最近はクリーム入りもあるが基本はふわふわのパン。
「あの見た目に騙されたって思ったな。だいたいメロンも入ってないし」
「入ってないですね」
子供のように口を尖らせる諒がおかしくて、笑ってうなずく。
確かにサキも同じことを考えたことがある。
「人間も一緒で見た目はいい人でも腹の中じゃ何を考えてるか分かんねぇヤツもいる。中身を白状してるアンパンの方が正直で好きだ」
「ここで告白されても困ります。それはそういうパンですから」
「そこから学んだのは見た目に騙されるなってことだ」
パンに諭されるのは心外だが、確かに言い得て妙、である。
なんだかおかしくて濃い目に入れた茶をそっとテーブルに置いた。
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