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「ここに来る前に神社の所で綾乃さんに会った……あれ?」
言いながら感じたのは違和感。なぜなら歩いてきた方角が諒と逆だ。
「本当に綾乃さんと一緒じゃなかったんですね」
「なにを聞いてた? あいつを送り届けてノブさんの店で雨宿りして……鍵を忘れて取りに来ただけだ」
だったら一緒に居たのは綾乃ではない。
「髪の長い女の人と……もしかしてドッペルゲンガーですかね?」
湯呑を持ち上げて念入りに吹き冷ましたはずの茶が熱かったのか、嫌そうな顔になる。
「聞くな、阿呆。髪の長い女性はいくらでもいるし、他人の空似や思い込みの可能性の方が高いに決まってる。オレは最初っからドッペルゲンガーなんて信じてないからな」
口を付けようとして諦めてテーブルに湯呑を戻す。
「でも、あれは綾乃さんでしたよ。メロンパンを買いに来たって」
「――そう思っただけだろ。オレが一緒に居たのはノブさんの姪っ子だ。メロンパンも買いに行ってない。ドッペルゲンガーを意識するからそう見えただけで、最初っから綾乃が二人いると思わせるように仕向けられたんだろ」
「見間違いですか?」
「当たり前だ。だいたい騒いでるのは綾乃の周囲の数人だけ。あのグループには意図的な圧力があるんだろ……俺には関係ないけどな」
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