想い違いとすれ違い

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想い違いとすれ違い

 なんとかは風邪をひかないというが――そうなのだろうか。 「もぉぅっ……っ!」  サキは領収書を握りしめて、吼えた。  ただ今――土曜の朝から事務処理の真っ最中。  領収書の枚数を数えていたところに派手なくしゃみに縮み上がったところ。 「風邪をひいたんなら家で寝ててくださいっ」  夜半まで降り続いたきれいに雨は上がり、今朝は気温はぐっと下がった。  低空飛行で鼻をくずつかせる諒に目を眇める。 「そんなヤワじゃねぇ。どうせ誰かが噂してるんだろ」 「――噂ねぇ」  くしゃみ一回は悪い噂、二回は笑いの種――諒のことだ二人に悪い噂をされているか、笑いの種にされているか。どちらもあり得る。  くだらないことを考えてへにゃりとクッションに沈む諒をにらんだ。 「……今日は人に会う約束がある。それが終わったら昼から休みにする」  半分沈み込んで、ぼそぼそとつぶやいた。 (ってことは、気づいてないのか)  今から思えば寝ぼけて取り上げた携帯――これがマズかった。 (まさか、諒さんだとは……思わなかった)  朝から深刻な声で急用だと呼び出されて駆け付けてみれば「請求書はどこだ?」――どこが急用なのだろう。
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