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「ちょっとした興味だ。ミケは親父さんの再婚にヤキモチを焼いてんだろ」
「違います。家族をほったらかしにしてきた父が許せないだけです」
「仕事が忙しいのも、地方に転勤になったのも親父さんのせいじゃないだろ」
会社員であれば仕方のないこともある――というのは理解しているが。
「だとしても母が病気になったとたん離婚はないでしょ。再婚相手は若い女性で、もうすぐ妹か弟がなんて……信じられません」
「話をしようにもミケが逃げ回ってるんだろうが」
「私は邪魔者ですから……っ、痛ったぁ」
虚しくなって歩みを緩めたサキ頭を軽く叩かれた。
「勘ぐりすぎだ」
言い置いてさっさと歩いて行く。
すれ違った家族連れの買い物客を目で追いかけて傍若無人な背中を追いかける。気分は母鳥を追いかけるカルガモだ。
「私のことはどうでもいいんです。綾乃さんに会うってことはドッペルゲンガーを見つけたってことですよね」
「――ドッペルゲンガーじゃない」
追いついて早口で問うたサキに嫌そうに肩をすくめる。
連れられてきたのは――覚えのあるカフェ。
「今日は奢りだ。うまいものを食って機嫌を直せ」
言い募ろうとするサキを遮るようにドアを引き開けると甘い焼き菓子の香りと柔らかなコーヒーの香りに憤りは溶けた。
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