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頭か尻尾か。それが問題だ。
頭か、尻尾か。さて、どちらにしようか。
悩みながら帰路を急ぐサキの視界で白いものが横切った。
ゴミ、だろうか。
なぜか気になって視線を落とした。
緩い風に弄ばれる、花びら。
立ち止まって見上げたのは薄紅の――満開の桜。
日本人が桜に惹かれるのはどうしてなのだろう。
綺麗だと思うがどうしても好きになれない。
好きになれないのは桜のせいではない。サキが悪いのだ。
ため息をついて店先に貼られたチラシをなんとなしに眺めた。
第三十二回、桜祭り
――夜桜のライトアップと大人気ゆるキャラのショー
――飲んで食べて商店街ぐるっと食べ歩き
――桜をイメージした限定スイーツも販売
(桜餅シューに桜鯛焼き……桜パフェもいいなぁ)
暗いガラスに映るのは若い女の子。取り立てて美人でもなくブサイクでもない。体形は至って中庸。名前は三宅サキ、十六。この春から高校二年。
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