1年〜2年春大会

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 高校はそこそこ野球が強い進学校を選んだ。  せっかく優秀な頭脳を持っているのに、野球しか能がない奴らと同じ高校に行くのは勿体ない。そこそこレベルの強さなら、俺一人で甲子園ぐらいには連れて行ってやる。そう思っていた。  成田健吾は入学時、野球部の同期の中では全く目立つ存在ではなかった。身体が小さく、野球歴が浅いため技術も無い。俺と同じピッチャー志望だと聞いた時は鼻で笑った。  そのくせ入部挨拶では一丁前に「このチームで甲子園優勝をしたいです!」なんて力強く宣言していた。  1年の冬を終える頃。成田はいつのまにか俺の脅威となるまでに成長していた。  入学時は160センチも無かったであろう身長は170を大きく超え、伸び悩む俺をよそに球速も投球術もメキメキと成長していった。  俺は焦った。野球で言うところの主人公は、そのチームのエースだと俺は思っている。  俺はずっと主人公だった。こんなぽっと出にその座を奪われるわけにはいかない。脇役になるなんて、まっぴらごめんだ。  2年の春大会。俺は監督から背番号1を託された。  ベンチ入りしただけで喜ぶ隣の成田を見ながら、やっぱり主人公は俺なんだと思った。  昔より野球の技術面でも学力面でも実力が近くなったせいか周囲からチヤホヤされることこそ減ったものの、この座だけはしっかりと守り抜くことができた。  結局、春大会は県内強豪私立相手に惨敗を喫したが、俺の実力だけで言えば奴らにだって負けてなかったはずだ。進学校で勉強が忙しい分、むしろ本当は俺の方が凄いに違いない。  なのに勝った強豪校の奴ばかりが注目され、俺は納得がいかない気分だった。
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