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「この事は二人の秘密だよ。北川さん」
天井を見つめながら彼はそう言い、タバコを一本口に咥え起き上がる。カチッと言う乾いた音と同時にオレンジ色の火が彼の顔を薄暗い中から炙り出す。
長い睫毛が印象的な彼は似合わないタバコを吹かしていた。白い煙が舞って消えて行く。
タバコ吸っていいよなんて、一言も言ってないのに。
先程まで私の首筋や体を這っていた唇はニコチンを含むタバコを咥えてヤニ臭くなっている。もう私を愛でる唇はそこにない。
色白な肌が青白い月明かりのせいで彼が蝋人形に見える。血の通っていない、限りなく人に近い見た目をしたそれ。
体中が痛い。背骨と股関節がベッドと同じ様に軋み、下腹部には余韻の熱と裂けた痛み。
タバコを吸いながら下の処理を始めた彼を横目に、私も自分の下の処理をする。
トイレ以外で初めて股を拭いた。こんなに虚しい物だとは思わなかった。
ベッドの中でモゾモゾと芋虫の様に動きながら水飴の様な滑りを拭う。
拭き終わったティッシュには血が付着していた。
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