呑み込む。破る。

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呑み込む。破る。

私の膜を破る彼の息遣いが荒かった。 普段優しく穏やかな彼からは想像もつかない様な荒い息を私の耳へ吹きかける。 薄暗い中で微かに見えた君の顔も、雄と化していた。 蕩けた目に半開きの口。 性欲と言う欲が似合わなそうだった彼は、ここにいない。 私を突き破り動く彼は性欲そのものだ。 ただ快楽に任せて体を動かす。 脳はほぼ機能していない様に見える。 そう。この顔が見たかったの、私。 目尻から垂れ落ちた涙が暖かい。 鼻の奥がツンと痛む。 嬉しさ半分。虚しさ半分。 赤と青の感情が混じり合い紫色になる。 そんな私の気持ちなんて彼は微塵も知らないし、知ったところで理解をしない。 その蕩けた目は私ではなく結合部を見ている。 私ではなく私の中を感じている。 だけれど、脳が機能していない彼の口からはポツポツと小雨のような呟きが聞こえる。 「可愛い。好きだよ」 弱くて頼りのない声色で彼は吐息と一緒に吐き出す。 それでもこの瞬間だけは本当になっている気がした。
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