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「セックスの頻度について見直そうと思ってる!!」 「ヤブカラボウ、に?」 「うっ……的確な日本語だけどさ」 互いの休日(オレは自営業だから余裕のある日が休日)に、ソファでギターを抱いている彼に向かってオレは言った。 「セックスの頻度? 確かに、決めていなかったな。けれど、うまいことやっていたろう? 不満が?」 「あるから提案してるんだよ!!」 「ふうん、だったらどれくらいがきみ好みなんだ」 しなくていい、とまでは決して言わない。というか、言えない……。 なにせ、オレは彼とセックスするのが決して嫌というわけじゃないからだ。ストレス発散にはちょうどいいし、そうじゃなくても、彼の独占欲を一番感じられる瞬間だし、なにより、愛し合っている状態が明確に伝わってくるのが心地いい。 「しゅ、週に一回、とか?」 「ヘンリー、きみが要望するんだから明確に決めていい。どうして疑問形なんだい?」 「ち、違うんだ。二人のことだから、一緒に決めた方がいいかと、思って……」 ああ、嫌になる。オレはまた彼に責任を押し付けようとしている。彼に嫌われないように、彼とのちょうどいい塩梅を探そうとして、保険をかけて、墓穴を掘っている。 彼にはお見通しだとわかっているのに。 気まずい沈黙が流れて、勝手に慌てていたオレは自分にげんなりすると同時に、きわめて冷静な目でオレを見つめるトーマスに申し訳ない気持ちが湧きあがる。 「ごめん……」 「ヘンリー、私は怒っているわけじゃない。そうだね、少し、きみにわがままを言い過ぎたんだ。自覚しているよ。だから、もう少し落ち着くまで待とうか」 トーマスは確かに優しいが、こういう言葉がオレを惨めな気分にさせることを知らない。基本的にまっすぐで、陰キャの気持ちがわからない人なのだ。もちろんそれを批難するつもりはない。 「そもそも義務的にするものじゃないだろ……なんでもない」 「週一回! じゃあそうしようか、ヘンリー、これは、なんだからね」 「ああ、ごめんって!!」 オレが悪かった。認めよう。 けれど、彼とのセックスは体力消費が馬鹿にならないんだ。 2回戦は約束されているし、1回戦は激しくて、2回戦はねっとりねちっこくて、長い。彼の勃起力は尋常じゃなくて、調子がいいと3回戦目までもつれ込む。 そして、朝に4回戦を開戦することも、ある。 35歳の性欲じゃない。 下手したら20代より若い。つまり、オレより若い。 一方のオレは、もとから性欲旺盛な方ではなく、最低限の自慰行為でがん予防している程度の男だ。トーマスのおかげで性欲が上がったことは認めるが、体力が追いつかず、1回で限界まで絞られるものが、2回も3回もできるわけがない。腹上死なんてまっぴらだ。
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