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「私がまたステージに立ちたいと言ったら、どうする?」
あの日、君はそう言った。
人気絶頂のアイドルが引退をかけて言った言葉だ。
今思えば俺を試す意味があったんだろう。
「その時は、全力でサポートするよ!」
この約束がプロポーズになった。
あれから何十年経ったかな。
君はそのあとすぐ引退し、俺と一緒になってくれたね。
一般人になってもマスコミに追いかけまわされて、大変だったな。
たまにテレビでやる懐かしのアイドル特集では、毎度のように登場する。
まったく君は人気者だ。俺なんかじゃもったいないと、いつも思っていたよ。
息子たちも、孫たちも、自慢のおばあちゃんだと言ってるよ。
君は、新しいステージへと旅立った。
あのアイドルが・・って、また世間をにぎわせて。
テレビからも、街を歩いていても。
君の歌がよく流れてる。
変わらないな。
どんなにシワが増えたって、どんなに白髪が増えたって。
喉だけはいつも大切にしていた君だ。
どれだけ時だ経っても、歌声だけは変わらず美しいままだ。
その声をずっと側で聞いていられる。
こんなに幸せなことはない。
さあ、そろそろ俺の出番かな。
約束したからね。一人だけでステージに立たせるわけにはいかないよ。
もちろん主役は君だ。でも俺だって、やるときはやるんだ。
新しいステージ、作ろうじゃないか。
目をつぶれば、君の声が聞こえる。
ステージで高らかに歌う君。
まぶしいライトが君を照らす。
ファンの声援が聞こえる。
手拍子にのせて、君はまた歌う。
最高のステージだ。
ずっと君の歌声が聞こえる。
ずっとずっと、聞こえる。
目を開けても聞こえる。
目の前で聞こえる。
今まさに。
ここで。
君の声がッ・・・・!
「WRYYYYYYYYYYYYY!!!!!」
出ましたBA-BAの金切り声!!!
激しいヘッドバンギングでホワイトヘアーをかき乱す!!
ファンも負けじと叫ぶ!WRYYYYYYY!!!
武道館の熱気は最高潮に達する勢いだ!!!
「サポートメンバーの紹介だぁ!ドラム、GI-GI!!!」
ドドドドドドドドドッッッッ
ジャーンッッッ
「YEEEES!!ナイステク!!」
いやまさか老人ロックブームが来るとは思いませんでしたわ。
ノリノリのばぁさんに誘われてドラム始めてみたらコレまたハマっちまって。
武道館まで来てしまいましたよ。
「さあ夜はまだこれからだよ!次の曲!YU・I・GO・N!!」
ドッドッドッドッ
「残せよYUIGON!」
「死んだらMUGON!」
「残った遺族はBARIZOUGON!!」
WRYWRYWRRRRRRYYYYY!!!
ダダダダダダダッダーーーンッッ
最高だぜBA-BA!!
あの日の約束忘れちゃいねぇぞ!
お前さんのステージ、全力でサポートするぜぃッッッ
(おわり)
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