2人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
Tシャツ
見られてる、どうしよう!
不安を感じたが、
「大丈夫?これ着なよ」
と背の高い彼が声をかけてきてくれた。
そういいながらさっさと服を脱いでイラスト入りの黒いTシャツを差し出してくれた。
カナエは私のうしろに隠れたままで、私はどうしようか迷ってカナエの方へ振り返った。
カナエは彼を見つめたまま、
「ありがとうございます(><)」
と言った。私は受け取ると、「返さなくていいから」とだけ言い残して彼はすぐに行ってしまった。着替えを見たら悪いと思ったのかも。
帰りの車は、カナエは彼の話ばかりしていた。
ユミは何もしてくれなくて、ピンチを救ってくれたのは彼だって。
Tシャツは大学のサークルで作ったものみたいでサークルの名前が書いてあった。
「西涼大学 美術部だって」
信号で車が止まったときにカナエのTシャツに描かれた文字を読んだ。
カナエは返しに行こうという。
「カッコよかったよ。背も高いしさぁ。ユミはどうなの?」
「まぁ、やさしそうな感じ・・・だったかな。」
信号が変わって車を発進させた。
社会人になってからアパートと会社の往復で出会いはない。
「こんな出会いなかなかないよね。もしかしたらここから恋がはじまるかもよ」
カナエは助手席で笑いながらいう。
カナエは彼氏がいるからね。私の出会いってこと。
たしかにドキドキしてた。
目の前で男の人が服を脱ぐなんて、それだけでも普通じゃない状況だったし。
一緒に返しに行くとカナエが決めて、大学のことは調べておくといった。
カナエを家まで送って、私はアパートに帰った。
部屋に入るとすぐに妹が、
「ナンパされた?」
最初のコメントを投稿しよう!