Tシャツ

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ

Tシャツ

見られてる、どうしよう! 不安を感じたが、 「大丈夫?これ着なよ」 と背の高い彼が声をかけてきてくれた。 そういいながらさっさと服を脱いでイラスト入りの黒いTシャツを差し出してくれた。 カナエは私のうしろに隠れたままで、私はどうしようか迷ってカナエの方へ振り返った。 カナエは彼を見つめたまま、 「ありがとうございます(><)」 と言った。私は受け取ると、「返さなくていいから」とだけ言い残して彼はすぐに行ってしまった。着替えを見たら悪いと思ったのかも。 帰りの車は、カナエは彼の話ばかりしていた。 ユミ(わたし)は何もしてくれなくて、ピンチを救ってくれたのは彼だって。 Tシャツは大学のサークルで作ったものみたいでサークルの名前が書いてあった。 「西涼大学 美術部だって」 信号で車が止まったときにカナエのTシャツに描かれた文字を読んだ。 カナエは返しに行こうという。 「カッコよかったよ。背も高いしさぁ。ユミはどうなの?」 「まぁ、やさしそうな感じ・・・だったかな。」 信号が変わって車を発進させた。 社会人になってからアパートと会社の往復で出会いはない。 「こんな出会いなかなかないよね。もしかしたらここから恋がはじまるかもよ」 カナエは助手席で笑いながらいう。 カナエは彼氏がいるからね。私の出会いってこと。 たしかにドキドキしてた。 目の前で男の人が服を脱ぐなんて、それだけでも普通じゃない状況だったし。 一緒に返しに行くとカナエが決めて、大学のことは調べておくといった。 カナエを家まで送って、私はアパートに帰った。 部屋に入るとすぐに妹が、 「ナンパされた?」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!