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私の妹
「なに、いきなり」
私は少し不機嫌そうだったかもしれない。アパートに同居している妹のリナにつんと答えた。
「女2人で海なんてナンパ待ちしてるみたいじゃん(笑)」
私が不機嫌そうかなんて関係なくリナは笑いながらいう。
「やめてよ、こんな田舎なんだから。家族連ればっかりだったし」
「なんだ~。いい男いなかったんだ、残念だったね」
そういわれると、彼を思い出す。
私が「いなかった」と答えなかった。
「んっ?なにかあったの?」
リナは興味津々。
私はカナエの水着のこととTシャツをくれた彼のことを話した。
「カナエちゃん、おっぱい大きいからなぁ。ぶちんっって切れたんじゃない?」
リナはふざけた身振り手振りでそういう。
「カッコよかったの、その人?」
「ん〜、まぁ、かっこ悪くはなかったような」
「カナエちゃんは彼氏いるんでしょ?おねえちゃん、彼氏は?できないの?」
「全然ないから、そんな出会とか」
「じゃあちょうどいいじゃん!」
そういうことじゃない。
「ナンパされたんじゃないんだから」
「でも会いにいくんでしょ?海で出会って、また会うって。
いいじゃん!」
まったくみんなそんなこと言って。まともに言葉も交わしてない。服を返して、それ以上なにも話さないかもしれない。
そんなに話も盛り上がらないかも。私はそんなにおしゃべり上手じゃないし。
「大学の頃に好きな人いるって言ってたじゃん」
「えっ?もう昔の話だから」
「それ以来じゃない。おねえちゃんに恋のチャンスが巡ってくるなんて!
そういえば海で告白して振られたんじゃなかった?そのとき」
まだ覚えてたんだ。忘れてくれればいいのに。
大学生の頃、サークルのみんなで海に行ったときのこと。その思い出話をリナにしたことがあった。
「もう、やめてよ」
「ごめん、ごめん。イメトレしといたら?彼と会ったときのために。男と話すのひさしぶりでしょ」
「そんなことないよ」
とは言ったものの、話す相手は職場の上司のおじさんたちだけ。
40代後半のいい感じのおじさんたちだけ。やさしいんだけど。
海に行くことにしたのもそんなおじさんたちに同じようにあーだこーだを心配されたせいってのもある。
「そんなことあるかも」
「でしょ!大学生だから年下の男。リードしてあげないとかもね〜」
年下か・・・
「ゆるせない」
口をついてそんな言葉が出た。
「えっ、もう年が気になるお年頃だった?」
「あっいや、そうじゃなくて、ほんとはもっとカナエと違う話ししたかったのにさ。ずっと彼の話ばっかり」
「違う話って?失恋でもしたの?・・・それで”ゆるせない”になるの?」
「なんかさ・・・もう疲れたのかも、今日は」
「うんうん、重症だね。恋のはじまりだから」
次の日、カナエから大学の文化祭の連絡が来た。
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