百年の問い

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 ワタシは、百年ごとに問いかけます。  何ごとも、本人の意思確認なしには進められませんから。  百年経ってのち、目覚めるか、眠り続けるのか選択をするのは、あなたなのです。  あなたは、大切な人と約束しましたね。  ともに、百年後に目覚めようと。  ふたたび、左右の()でお互いの姿を確認しようと。  聞こえますか。  ひとり目覚めてしまった、あの人の慟哭(どうこく)が。  あなたを呼ぶ声が。  あなたは怖気(おじけ)付いてしまったのですね。  約束を反故(ほご)にすることよりも、まだ見ぬ未来を生きることに、強い恐怖を覚えてしまった。  無理もありません。  あのとき、極限まで追い詰められた人々は、まともではありませんでしたから。  ああ、こんな安直な言葉にすら、あなたは傷付くのですね。配慮が足りませんでした、申し訳ありません。  すこし、話し過ぎたようです。  選択を終えたあなたには、すべて関係のないことでした。  分かりました。  これがあなたの幸福。  これがあなたの望み。  ゆっくりお眠りなさい。  百年後、ふたたび、あなたに問いかけるその日まで。
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