Black or White

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その日の放課後、 職員室に用があるという佐橋と一旦別れ、 イケメンがいるというコンビニRに 立ち寄ってみた。 これと言って欲しいものがある訳ではなく 単なる時間潰しのつもりだった。 もちろんイケメン目当てでもなかったが、 一応、同じ学校の制服を着ている人が 店内にいないことを確認してから 売場をゆっくり歩き始めた。 棚に並んでいる新商品と思われる菓子や 飲み物を手に取ったり戻したりして、数分。 やがてレジ横のお弁当の棚にたどり着いた。 ちょうど業者から弁当が納品されたようで、 コンビニの制服を着た若い男性が忙しなく 弁当を棚に並べていた。 彼を目にした時の心境は、 今でもうまく言い表せない。 「いらっしゃいませ」 172センチの僕より少し背が高い彼が、 僕と目が合ってふっと微笑んだ。 ハッと我に返り軽く頭を下げた僕は、 手にしていたスナック菓子をレジに置いた。 レジに立ち、 スナック菓子をスキャンした彼に 「レジ袋はいりますか」 とマニュアル通りに訊かれ、首を振った。 スナック菓子の代金を支払うと、 「ありがとうございます」 と彼に笑顔で頭を下げられた。 コンビニでは全く珍しくないやり取り。 でもそれで、終わらせたくはなかった。 その場に立ち尽くしたままの僕を見て、 彼はとても驚いたようだった。 「どうしました?大丈夫ですか」 「あ、すみません。あの」 「はい」 初対面の彼に 印象に残る一言をと考えた挙句、 僕が口にしたのは、 僕の人生で嫌と言うほど聞かされた あの言葉だった。
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