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「いや、びっくりしたよー」
T大の2年生だという川瀬由貴は、
そう言いながら爆笑した。
後から合流してきた佐橋が
訳がわからないという顔をして、
顔面蒼白の僕と、
興奮で頬を紅潮させた川瀬さんを見比べる。
ここは、コンビニから数分の喫茶店。
バイト上がりの川瀬さんに、
ホットコーヒーを佐橋共々奢ってもらい、
座っていた。
「岸野が、何したんですか?川瀬さん」
痺れを切らした佐橋が、遠慮なく切り込んだ。
「岸野くん、言ってもいい?」
「はい‥‥佐橋になら大丈夫です」
いたたまれなくて、両手で顔を押さえた。
まだ立ち直れない。
絶対に言いたくなかった言葉だったのに。
「岸野くんが言った言葉は、ズバリ告白」
「告白?!この岸野がですか?」
「蚊の鳴くような声で『すみません、
一目惚れしました‥‥』って言われたら、
そりゃあ驚くって」
クールな外見とは裏腹に、川瀬さんはまた
顔を真っ赤にしながら笑い転げた。
「そんなに、笑わなくても」
「だって、かわいすぎてさあ」
「かわいいって、何ですか」
僕と川瀬さんのやり取りを見て、
佐橋が口を挟む。
「川瀬さん、こいつとは中学の時から
一緒ですけど、かなり告白されてるんです。
誰とも付き合わない、堅物な奴ですけど。
親友の僕からお願いします。
岸野を悪いようにしないでください」
「佐橋」
「大丈夫大丈夫。もう計画中」
「「計画中?」」
佐橋と同時に、川瀬さんの言葉を反芻した。
「でもまだ岸野くんは、受験で忙しいし。
勉強を頑張って欲しいから、邪魔しないよ。
計画は岸野くんの進路が決まってから始動」
「それまでは?」
「LINEと電話で。もちろんバイト先にも、
来ていいよ」
「あ、はい」
「岸野、良かったな」
佐橋に微笑まれ、小さく頷いた。
「うん」
「岸野くんは、いい友達を持ってるね。
羨ましいよ」
「佐橋は、最高の友達なんです」
そこでやっと緊張が解れた僕は、
川瀬さんに微笑み返すことができた。
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