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モテモテ大学生の初恋の行方。
恵まれた自分の人生、
手に入れたいと思うものはないと
思っていた。
彼に出逢うまでは。
彼、岸野葵とは、
今年の春、T大のキャンパスで出逢った。
桜が散りかけた街路樹の下を歩いていたら、
数メートル先で、
彼がひとり空を見上げて、微笑んでいた。
取り巻く空気が、
彼の周りだけ澄み切っているように見えた。
一目惚れだった。
今まで告白されることは多くても、
恋の予感を意識したことはなかったのに、
男性である彼に、初めての恋心を抱いた。
もっと、彼を知りたいと思った。
幸い大学には、情報通の佐橋雄大という
高校からの親友がいて、
彼の名前を始めとする情報は、
すぐに知ることができた。
「川瀬、岸野くんは文芸サークルと
天文サークルに入るみたいだよ。
いっそ、入部して近づいてみたら?」
「いきなり距離を縮めるのは、ちょっと。
佐橋。悪いけど、どっちかに入って様子を
見てくれないか」
「いいよー」
持つべきものは、頼れる友達だ。
僕は初めての恋心の自覚を、
数多くの取り巻きの中で佐橋にだけ話した。
佐橋は目を見開き、感動した様子だった。
「やっと、川瀬と恋バナできる日が来た」
「はは。オーバーだなあ」
「ところで、岸野くんのどんなところに
惹かれたの?」
「彼を取り巻く、空気感に」
「へえ。何か詩的な感じ。
川瀬、やっぱり文芸サークルに入ったら?」
「遠慮しておくよ」
彼のことは知りたいし近づきたいが、
今はまだ自分の中で気持ちを温めて
おきたいと思っていた。
同じ教室で授業を受ける中で、
少しずつ彼の人となりを知った。
彼は基本的に1人で行動していたが、
誰かが困っていたら、優しく対応していた。
「あ、どうしよう」
彼の前に座っていた女の子が、
ペットボトルのコーヒーを座席にこぼした。
たまたまティッシュを持たず、
困っていたその子に代わって、
彼はかがみこんで丁寧に拭き取っていた。
「ありがとう、岸野くん」
「いえいえ」
その子の彼に対する眼差しが気になり、
後で声をかけた。
「か、川瀬くん?えーどうしたの?
私に何の用ですかあ♡」
「いや、何でもない」
瞬時に気を向けられているのは
僕の方だとわかり、適当にあしらった。
あとは、彼は授業が終わっても、
すぐに教室を出ようとはせずに、
仲間が置き忘れしていないかを
机を回ってチェックしていた。
いっそ、僕も何かを置き忘れてみようか。
佐橋にそう言ってみたら、笑われた。
「そのうち、接点作ってやるから。
まあ焦らない焦らない」
とにかく、
彼が心優しいことは間違いなかった。
佐橋が彼とともに入った天文サークルでも、
彼は先輩のフォローを積極的にして、
一目置かれているらしいと聞いた。
「川瀬のことがあって、岸野くんに
近づいたけど、彼はすごくいい奴だよ。
嫌味なところがひとつもない。
さて、川瀬と岸野くんを
どうやって引き合わせようかな」
その作戦は、佐橋に任せるとして。
僕は6月19日に19歳になる彼の誕生日が、
気になっていた。
「川瀬、人が来てるよー」
授業開始まで時間があったので、
教室で取り巻き数人と喋っていたら、
入口から声がかかった。
「川瀬ちゃん。告られちゃうの?いいなあ」
取り巻きの秋津昌美が囁いてきて、
僕は苦笑いしながら入口に向かう。
入口には見知らぬ女の子が立っていて、
僕を見て恥ずかしそうに頭を下げた。
「あの。良かったら、これ読んでください」
手紙を渡されたが、僕は知らない人から
もらうものほど慎重にならなければと
思っていた。
「ありがとう。受け取るだけ受け取るけど、
返事は期待しないで」
「‥‥好きな人が、いるんですか」
「うん。ごめんね。じゃあ」
手を上げ踵を返すと、教室に戻った。
僕のことをよく知らない奴らから、
コソコソと陰口が叩かれる。
「あいつ、顔だけはいいから」
「川瀬だっけ?でも断ってたじゃん」
「単に好みじゃないだけだったんだろ。
噂では、すでに女の子取っ替え引っ替え」
「マジで?あんなに取り巻き作ってさあ」
「何様のつもり?」
その声を聞いて、
佐橋を始めとする取り巻きが、
そいつらに睨みを聞かせる中、彼を見ると。
彼は僕をまっすぐ見つめ、微笑んでいた。
初めて目が合って、思わず頭を下げた。
どんなことを言われても、
彼が信じてくれるなら構わない。
やっぱりもっと近づきたいと思った。
「岸野くんの誕生日祝い?」
「佐橋から渡してくれないか。ダメ?」
彼に誕生日プレゼントを贈りたいと
佐橋に言うと、ちょっと微妙な顔をして、
こう言った。
「突然、何かをもらうのって抵抗あるって、
川瀬言ってたじゃん。それを岸野くんに
するの?大丈夫かなあ」
「頼むよ。もちろん、僕の名前を出してさ」
「川瀬。それなら絶対に自分から渡した
方がいいって。彼が現時点で川瀬をどう
思ってるのか、わかる訳だし」
「そんな勇気があればとっくに近づいてる」
「やれやれ。じゃあやるだけやってみる?」
「お願いします」
では早速、プレゼントの調達をしよう。
僕はひとり、デパートに出向き、
彼をイメージする紺と薄紫のハンカチと、
靴下を買った。
翌日、教室で会った佐橋に彼のプレゼントを
買ったと話した。
「それ、持ってる?今日、岸野くんとランチ
の予定なんだけど。良かったら、一緒にどう?」
「持ってるけど‥‥え?今日、ランチ?」
突然の急展開に、動揺を隠しきれない僕に、
佐橋は更に言葉を畳み掛ける。
「もうこんなチャンスは、与えないよ。
頑張れ、川瀬」
佐橋に肩を叩かれ、腹が決まった。
「わかった。同席させてくれ」
2コマ目の授業が終わり、早いランチ休憩。
プレゼントを渡すことで頭がいっぱいの
僕は、学食で彼に会った時、黙って頭を
下げるだけで精一杯になってしまった。
「こちら、川瀬由貴くん」
佐橋がそう水を向けてくれたことで、
僕はやっと彼を見つめることができた。
「よろしくお願いします。川瀬です」
「岸野葵です。川瀬くんって、
呼んでいいですか」
優しい彼の優しい声に、癒された。
「はい、大丈夫です。ぜひ」
「何か、お互いに敬語で変な感じ」
佐橋が2人の間で苦笑いしている。
今日の取り巻きは、佐橋だけ。
周りは僕を見て、何かを囁いていた。
僕は気にはならなかったが、
彼は気になったのか、
「さすが、川瀬くん。注目集めてますね」
と言った。
「いやそんなことは」
と僕が否定し、
「そうでもないよ。普通普通」
と佐橋が笑うと、
「佐橋くん、感覚麻痺してるよ」
と彼も笑った。
笑うと、もっとかわいいんだなあ。
こんなに近くで彼の笑顔を見られて、
僕は心の中で感激していた。
いつもの定食が、
高級レストランの食事のように感じた。
早々に学食を出て、中庭に来た。
「そう言えば、岸野くん。もうすぐ
誕生日でしょ?」
不意に佐橋がそう言って、
僕にウインクしたものだから、
僕は慌ててバッグを持ち直した。
「そうなんだよ。あと3日。え?
何かくれるの?」
「僕じゃなくて、川瀬がね」
「えっ、川瀬くんが?」
驚いた様子で、彼が僕の顔を見た。
僕はバッグから小さな袋を取り出して、
彼に渡した。
「お近づきの、印です」
「ありがとう‥‥嬉しいです」
彼は少しテレたような表情で、僕を見つめた。
「開けてもいいですか?」
丁寧に封を開けた彼は、
ハンカチと靴下を見て、
心の底から嬉しいという声で、もう一度、
「ありがとう」
と言った。
「良かったな、川瀬」
「う、うん」
恥ずかしくて、彼の顔が見られなくなった。
たぶん、ただの友達の感覚ではないことは、
表情で気づかれている。
だから、彼が僕に向かって次の瞬間放った
言葉は、ある意味想定内だった。
「佐橋くんの前ですが、確認してもいい?
これって、もしかして返事が必要ですか?」
「‥‥あ。まあ、はい」
「でも、川瀬くんて、すごくモテますよね。
僕が相手では、不釣り合いなのでは」
「そんなことはない!」
思わず彼に刺々しい声で反論してしまった。
「そうですか‥‥では近々、僕とデート
していただけますか。返事はその時にでも」
「‥‥えっ?!」
驚いて固まる僕の隣で、佐橋が喜んでいた。
翌週の土曜日。都内某駅前。10時。
水族館に行くために、待ち合わせしていた。
「川瀬くん、おはよう」
水色のパーカーを着た彼が笑顔で現れた時、
僕は幸せというものを形にするとしたら、
絶対に彼の姿だと思っていた。
「おはよう」
震える声で僕は、彼に答えた。
「川瀬くん、緊張してる?大丈夫?」
彼に上目遣いで見つめられて、
心臓が爆発しそうになる。
「何とか、大丈夫‥‥初デートなんで」
「僕も初めてだよ。今日はよろしくね」
そっと右手を握られ、ドキドキした。
いっそ、時が止まればいいのに。
彼と見つめ合い、微笑みを浮かべたその時。
「葵!」
彼の背中に、突然僕らと同じくらいの
女の子が抱きついた。
「えっ?」
今、葵って彼を呼んだ‥‥?!
彼を見ると、明らかに不快という表情で、
彼女を振り払ってから、
「葉月」
と言った。
だ、誰?僕は呆然として、2人を見た。
「何故ここを」
「お兄ちゃんのことは、何でもわかるよ」
お兄ちゃん??
彼の腕を掴んで離さないでいる、
彼女の顔を改めて見た。
どことなく雰囲気は似ている。が。
それにしても、彼女のこの執着は異常だ。
「お兄ちゃん、恋人と会うってお母さんが
言うから気が気じゃなくて。その人が、
恋人なの?」
それが本当だとしても、
こんな公衆の面前で言える訳がないと思う。
彼は何て答えるんだろう。
僕は彼の言葉を、彼女とともに待ったが。
「お前には関係ない。帰れ」
と彼は言い、
まあそう言うだろうなと、息をついた。
案の定、彼女は激怒した。
「関係なくない!いいの?お兄ちゃん。
この人に、私との関係を話して」
「はあ?!」
思わず、僕が声を出してしまった。
ただの兄妹じゃないのか?
禁断の関係を想像し、眩暈がした。
「ここじゃ何だから、カラオケボックスでも
行かない?話そうよ、とりあえず」
気を取り直して、僕は彼のパーカーの袖を
引っ張り、促した。
こうして初デートは、波乱含みでスタート
した。
「で?葉月さん。お兄さんとの関係って、
具体的に言って何ですか」
黙ってしまった彼を横目に見ながら、
怒りを露わにしている彼女に話しかけた。
「川瀬さん。聞いてください。お兄ちゃんは
絶対に私のことが好きなんです。それは、
確信してます」
「はいはい。何かあったということですね。
続けてください」
「何度もキスしてます。私たち」
「それはいつですか?最後にしたのは?」
「もう止めてくれ。一生言うのかよ」
黙っていた彼が、そう言って頭を抱えた。
「5歳の時まで。私たちは両思いでした」
「それが、最後ですか?」
ちょっとホッとしてしまった自分がいた。
「ダメですか。私、お兄ちゃん以外、
ありえないんです」
「いつも人の進路を邪魔してばかりで、
だから親父が僕にひとり暮らしさせたのに。
住所突き止めて押しかけてくるし。
大家だって、お前が妹だって言えば無下に
できないだろ?いったい、お前は何がしたい
んだ」
「一度でいいから、私を抱いてよ」
「アホか。絶対、無理だし」
「じゃあお兄ちゃん、川瀬さんならいいの?
男性が抱けて、女性が抱けないなんて
おかしいよ」
「おかしいのは、お前だ」
何故妹を抱かなきゃならないと
口の中で呟いて、彼は僕を見た。
「何か、すみません。変なところを見せて」
「いえ。僕は一人っ子なので。兄妹喧嘩は
見慣れてないだけです。とりあえず」
「「はい?」」
「葉月さん。またお兄さんにキスして
もらえばいいのでは?」
「キスですか?あまり納得いかないですけど、
それでも仕方ないのかな」
「岸野くんもこの場を収めるには、
キスくらいしてあげないと。ねっ」
「川瀬くん、何を言ってるの?」
「僕だってこんなこと言いたくないよ。
初デートを邪魔されて腹が立ってるんだ。
いい加減、こんな痴話喧嘩は終わりにして
欲しい。2人とも、他人に迷惑をかけてる
こと、忘れないで」
最後の僕の言葉に、
特に彼は身につまされたようだった。
意を決した様子で、彼が彼女の手を取った。
「葉月、1回だけキスしてやる。
それ以上はなしだ」
「もちろん、舌は入れてくれるよね」
「な、何言ってるんだ、お前」
「岸野くん、反論はなしだよ。葉月さん。
それで、諦めるんだね?お兄さんのこと」
「はい‥‥泣いちゃうかも知れないけど」
「岸野くん、覚悟できた?」
「うん‥‥」
まさか、片想いの相手のキスを目の当たりに
するとは思わなかったが。
僕は呼吸を整えた彼に、声をかけた。
「さあ、どうぞ」
次の瞬間、彼が立ち上がると、
離れて座っていた僕の前に跪いた。
「葉月、やっぱり無理だ。ごめん」
そう言って、彼は驚いている僕の後頭部に
腕を回し、唇を奪ってきた。
「やだー嘘でしょ?!」
最初は騒いでいた彼女も、僕たちのキスを
見て諦めたのか、静かに泣き始めた。
僕は彼の意外な暴挙に打ち震えながら、
彼の唇を受け入れていた。
結局得をしたのは、キスをけしかけた
僕だけだった。
カラオケボックスを3人で出た。
「葉月、お前はもう帰れ。しばらく
連絡もしてくるな」
まだ涙ぐんでいる彼女に、彼はそう言った。
「大丈夫‥‥?」
思わず彼女に声をかけたが、
彼女は首を振るだけだった。
「川瀬くんには話があるから、残ってもらう
けど。もうそんな気分じゃなくなった?」
「そんなことは」
寂しそうに微笑む彼の顔を見たら、
それ以上、何も言えなくなった。
彼女が駅の改札口に消えたのを確認して、
彼を見つめると、彼は僕を見て頭を下げた。
「川瀬くん、ごめんなさい」
「えっ」
「いきなりあんな真似をして‥‥いくら、
妹とのキスを回避するためとはいえ、
川瀬くんを利用した。許してくれとは
言えないけど、謝ります。ごめんなさい」
「利用だなんて‥‥葉月さんには悪いけど、
あそこで本当にキスをしたら、岸野くんが
傷ついちゃうと思う。けしかけた僕が悪いよ、
こちらこそごめんなさい。
それより、これからどうする?」
「川瀬くんへの返事もしたいし、これから
僕の家に来ない?」
「岸野くんの家?いいの?」
「うん、大丈夫」
またそっと右手を繋がれ、ドキドキした。
彼の唇の感触を思い出していた。
彼の家は、駅を降りてすぐの場所にあった。
「電車がひっきりなしに通るんでうるさい
けど、多少の音を出しても怒られないんだ」
コーヒーを飲みながら、彼の話に耳を傾けた。
「川瀬くんのこと、入学してからずっと
いいなって思ってた。佐橋くんと仲良く
なって、彼から川瀬くんの話を聞いてたんだ」
「本当‥‥?!」
佐橋、何も言ってなかったぞ。あいつー。
「川瀬くん。順番が逆になったけど、
僕と付き合ってくれますか?」
「はい。もちろん。ありがとう。ぜひ」
両手を差し出すと、彼に強く掴まれた。
「改めて、キスしたい。こっち来て」
2人を隔てるテーブルが邪魔だった。
立ち上がり、彼の側に座った。
僕より背の低い彼に覆い被さるように、
抱きしめると、彼は肩越しに囁いた。
「川瀬くん、大好きだよ」
嬉しくて、彼を押し倒してしまった。
「岸野くん‥‥僕もキミが好きだ」
まつ毛とまつ毛が、触れ合う距離。
唇を重ね、舌を絡め合わせると、
彼は小さく息を吐いた。
その息まで吸い取るように、キスを続けた。
2人で最後までしたいという思いから、
ドラッグストアに走った。
指サック、ローション、コンドームを買い、
アパートに戻ると、服を脱がせ合った。
普段は物腰の柔らかい優しい彼だが、
セックスとなると、貪欲に快楽を求めてきた。
まず、お互いのそそり立つものを扱き合い、
口に含みながら、溜まった精を吐き出した。
彼も、飲むことには抵抗はなかったようだ。
次にローションを使い、
大切な部分にゆっくり指を挿れ合った。
時折、僕は甘い声を上げ、
彼も負けじと甘く切ない声を上げた。
どちらが先に
相手の大切な部分に挿れるかは、
再び早く勃った方と決めていた。
「川瀬くん、挿れてもいい?」
僅かに、彼の方が準備が早かった。
初めから決まっていたかのようにすんなり
入ってしまい、その瞬間、彼の動きが
止まった。
「痛くない?‥‥大丈夫そうだね」
揺らされながら、彼にしがみついた。
「ああっ」
「川瀬くん、気持ちいい?僕も気持ちいいよ」
キスで唇を塞がれながら、
腰の動きが止まらない彼によって
快楽を与えられていた。
このまま、すぐに達してしまいそう。
それは彼も同じだった。
「川瀬くん、ありがとう‥‥次はキミの番だよ」
汗で濡れた髪を振り乱した彼に微笑まれ、
起き上がる。
乾いてしまった彼の大切な部分をローションで
また潤し指で解していくと、彼は鳴き出した。
指が吸い込まれるように、1本2本と入っていく。
根元まで挿れても、彼は喘いでいる。
「ああ♡ああん♡あっ♡あああん♡」
聞いているこちらまでゾクゾクするような声。
愛撫が止まらなくなった。
「川瀬くんっ、もっと、あああっ」
どうやら、彼は挿れて欲しいタイプのようだ。
僕も挿れたい方だと気づいていたから、
ちょうどよかった。
「何?もっと何をして欲しいの?
岸野くん、言って。何が欲しい?」
「い、言わせないで‥‥ああっ♡あああっ♡」
「ここ、気持ちいいの?どうして欲しいか
言わないと、してあげないよ」
「奥、奥まで、突いて‥‥!」
「よく言えました」
一旦指を抜き、そそり立ち揺れていた僕のに
素早くコンドームを被せると、彼に挿れた。
中は温かく、僕のを受け入れるほどに
広がっていた。
「ああああああ、すごいっ」
「何がすごいの?言ってみて」
腰をグラインドさせ、彼の前立腺を刺激する。彼は僕の下で艶めかしい声を出した。
「やあだ、そんな風に、言わないでえ」
すっかり女の子になってしまった彼を
抱きしめ、唇を奪った。
彼との深いキスは、これで何度目だろう。
歯並びのいい彼の口の中を犯しながら、
彼へ打ちつける杭を深く刻んでいく。
その度に彼は声を出したくて、首を振る。
彼の紅潮する頬が愛しくて、唇を離し
頬を撫でた。
「イキそう‥‥♡」
「じゃあ、一緒にイこう」
腰の動きを速め、彼に合わせて
高みに登って行く。
彼の声も一段と高くなった。
「あっ、出る‥‥!!」
彼の中に吐精したのと、
彼がナカイキしたタイミングは、
ほとんど同時だった。
彼の髪を撫でながら、
纏わりつく汗はそのままに、抱きしめた。
「挿れるのと挿れられるのを経験してみて、
どうだった?」
と彼に訊くと、彼はテレ笑いをしながら、
「やっぱり挿れられる方が気持ちいいね」
と言った。
「だよね。岸野くん、すっごく声出てた」
「さすがに、近所に丸聞こえだろうなあ」
「あはは」
「今度、ラブホ行こうよ」
「いいよー。それなら鳴き放題だしね」
「いっぱい鳴かせてくれる?」
「もちろん」
こうしていろいろあった彼との初デートは、
幕を閉じた。
初恋は実らないと聞くが、僕は叶った1人だ。
これから彼とは秘密の恋にするのか、
大学内で公認の仲にするのか、
話し合って決めたいと思うが、
どちらにしろ、
楽しい生活が待っていることは間違いない。
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