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愛しの恋人との仲直りの方法。
嬉しいことがあった。
学内で蔓延る噂のせいで離れていた
取り巻きたちが、続々と戻ってきたのだ。
「川瀬ちゃん、水くさいよ。
俺は、川瀬ちゃんが誰を好きだろうと
全く気にしない。それよりあれだけ
一緒にいたのに、正直に岸野くんと
付き合ってるって話してくれなかった
ことがショックだったね」
と話すのは、同じ学部の秋津昌美。
その他のメンバーも同じ理由で距離を
置いていたが、僕がひとりになったの
を見て、戻ってくる決意をしたという。
「良かったね。由貴」
彼はそう言って、僕の隣で微笑んだ。
彼との関係は、一変していた。
女の子とのキス事件があってから、
軽いキスはしても、
セックスを一切しなくなったのだ。
彼とは付き合って早々に
一線を越えてしまったので、
彼の人となりを理解しないうちに
愛を交わすことばかり夢中になった。
それでは、永遠の愛は誓えない。
どんなことで彼の心が傷つき、
どんなものを彼が大切にしたいのか、
些細なことでも知りたかった。
性的な相性がいいのは充分理解したから、
今度は性格的な相性を知りたいと思った。
彼に伝えると、納得したように頷いた。
「そうだね。僕たちは急ぎすぎた」
恋の行く末に不安だったあの頃が懐かしい。
最後に新宿のラブホで抱き合ってから、
3ヶ月が経った、ある秋の日の昼休み。
学食の窓から空を見上げながら、
彼を待っていた。
「由貴、お待たせ」
定食のトレイをテーブルに置き、
向かい側に座った彼を見て、言った。
「今日、葵んちに泊まってもいい?」
「いいけど。今日バイトは?」
「ある。だから終わってから行くよ」
「わかった。明日は学校休みだし、
ゆっくりしよう」
彼とは以前より言葉を飾らず、話せていた。
今夜は、2人で映画を観る予定だった。
彼の部屋に着いたのは22時になってからで、
先に風呂を済ませた彼を追いかけるように、
風呂を借りた。
ドライヤーで髪を乾かしながら、彼と話す。
「葵、お腹空いた」
「パスタで良ければ、茹でるよ」
「お願いします。葵は、食べたの?」
「まだ。一緒に食べよう」
「うん」
そんな会話が、とても心地よかった。
出来合いの蟹クリームソースがかかった
パスタとサラダ、ワイン、チーズを傍らに
映画を再生した。
「由貴」
途中、彼に肩を抱かれながら
パスタを摘み、ワインを飲んだ。
「幸せだね」
「うん」
そう言って、
どちらかともなく唇を合わせた。
唇を離し、映画に意識を戻した僕に、
彼は言った。
「由貴、もしかしてもう一生、僕とは
セックスしないつもりじゃないよね」
「えっ?」
彼の言葉に驚き、リモコンの一時停止
ボタンを押した。
「葵?」
彼は僕に抱きつき、背中に腕を回した。
「由貴がそう言うならって、いいよって
言ったけど、もう3ヶ月だよ。
僕はいつまで我慢しなきゃならないの」
「我慢してたの?本当に?」
彼の顔を覗き込むと、彼は頷いた。
「今回の件で僕はずいぶん由貴を傷つけた。
だから今は償いの時期だと思った。でも、
このまま唇を合わせるだけのキスだけじゃ、
たぶん無理だ」
「無理って、それは?」
「もちろん、浮気をするとかじゃないよ。
だけど、もうこれ以上キミをネタに
自己処理するのは難しいんだ」
「自己処理笑笑」
「笑い事じゃないよ!」
「ごめんごめん」
「で、どうなの。僕としたくないの」
「一生しないなんて、そんなことないから。
ただ何もなくても楽しかったからさ。
葵の気持ちを考えなくて、ごめんね」
彼の右頬にそっとキスすると、
彼は僅かに首を振った。
「違う、言いたいことはこんなことじゃ
ない。由貴が好きだから、したいんだよ」
「わかってるよ」
顔を傾けて、彼の唇にキスを落とした。
そのまま舌を入れたら、彼は息を漏らした。
「由貴‥‥しようよ」
とろんとした上目遣いで僕を見る彼に、
僕は笑って頷いた。
間接照明ひとつ点けた部屋。
裸になった僕たちは、抱き合った。
「由貴」
彼は積極的に、僕にキスを仕掛けてきた。
そっちがその気ならと、
舌を絡め合わせた深いキスをしながら、
彼のそそり立つ真ん中をまさぐった。
「ああっ!」
唇を離してのけぞった彼の背中に手を添え、
もう片方の手は彼の真ん中を追い詰めた。
動きを速めるにつれ、
彼の喘ぎ声は大きくなっていく。
目を閉じて快楽に溺れる彼に、囁いた。
「葵、こっちも触るよ」
背中に添えていた手で彼の乳首をつまみ、
転がした。
「きもちいいよぉ‥‥」
「ずっと、こうされたかったんでしょ?」
彼はもう、言葉を発する状態ではなかった。
すっかり、僕の愛撫の虜になっている。
乳首の刺激を続けながら、
彼にM字開脚をさせ、
大切な部分にローションを塗ると、
迷わず指を挿れた。
つぷつぷと指が何本も吸い込まれていく
のを見ながら、また囁いた。
「すごいね。何本入ってるかわかる?」
「わ、かん、なぁい‥‥!」
「そんなに抱かれたかったの?エッチだね」
「やあっ、ああん」
身をよじり、彼は快楽に翻弄されている。
本当に彼は、才能があると思った。
指で刺激できる最奥まで探り当てていた。
彼は頬を赤く染め、うっすらと汗をかいて
鳴き続け、やがて彼は腰をくねらせながら、
「おねがい、いれてぇ‥‥!」
と懇願してきた。
僕は彼から指を抜いて、
自分にコンドームを付けると、
素早く彼の中に入った。
彼は既に気持ちよさそうだったが、
腰を上下左右にグラインドさせ、
彼の感じるところを探っていく。
彼の甘く濡れた鳴き声を聞きながら、
次第に僕も快楽の渦に巻き込まれていった。
「はあ‥‥気持ちよかった‥‥」
息を弾ませ、
満面の笑みを浮かべる彼の髪を撫でた。
「葵は、本当に貪欲だよね」
と僕が苦笑いすると、
「だって、気持ちいいんだもん」
とあっけらかんと返事が返ってきた。
「気持ち良すぎて、膝が震えてるよ」
「そうですか」
「由貴は気持ちよくなかったの?」
「いや、まあ気持ちよかったけどさ」
正直、ワンラウンドで充分だと思っていた。
久しぶりに彼とセックスをしたが、
彼の乱れっぷりについていけなかった。
たぶん、この3ヶ月で
恋する気持ちがいい感じで
落ち着いたのだろうが‥‥。
これはシチュエーションを変えないと、
マンネリになるパターンだと思った。
「由貴?何考えてるの?」
それでも彼は愛しく、
大好きな存在なのは変わらない。
僕のすべては、彼の笑顔のためにある。
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