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目の前には、薄ピンクか白か分からない世界が広がっている。この学校の有名な並木道。やたらと大きい門まで続く美しい桜たち。僕はそんな道を1人で歩いていた。 周りには少し大きくて真新しい制服に身を包んだ人たちが両親と一緒に歩いていて、そんな人たちに好奇の目で見られていた。 「何でこんなに遠いんだ?」 なかなか辿り着かない道のりに少し嫌気が差してきた。 「こっち!こっちよーかなちゃーん!」 門の近くでぶんぶん手を振りながら僕を呼ぶ人がいた。 「ちょっ、まじか!?恥ずかしいから、そんな大声で呼ばないでよ…」 俯きながら大急ぎでその人の所へ向かう。 「もう!かなちゃんったら、車で迎えに行くって言ったのにー!勝手に1人で来ちゃうんだもん!一緒に行きたかったのにー!」 パシパシ僕を叩きながら捲し立てているのは、僕の伯母にあたる瞳子さん。 「ごめん瞳子さん。ちょっと1人で歩きたかったんだ…この辺りがどんな所かも気になったしさ…」 「そうなの?ホテルから距離があるから心配しちゃった。」 さっきまでの勢いは収まったのか瞳子さんが心配そうな顔で僕を見ている。小さくて何だかふわふわした可愛い人。母さんのお姉さんなのにどこか頼りなくて守ってあげたくなる。 「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。でも僕もう高校生だよ…ある程度のことなら1人でできるよ。」 「そうだけど…心配なものは心配なの!」 どこか納得できてないような顔で、ブツブツ言っている。 ……間もなく、入学式が始まりますので、関係者の皆様は講堂の方へお集まり下さい。…… 何処からともなくアナウンスが聞こえた。 「ほら瞳子さん!入学式始まっちゃうよ!講堂行かなきゃ!」 「やだっ!かなちゃん早く早くー!講堂はこっちよー!」 バタバタと急ぐ僕たちを見つめていた人に気づくはずもなく、その場をあとにした。 「見ぃつけた…」
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