17.こっちを立てればあっちが立たず

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沢山の人がイヴを囲む。その中にははかせ、カノン、ターニャ、シャル、タカト、ヴァン、リリィ、オルガ、ルキ……リアナ、帝のひとや、街で会った人達……みんな、イヴを見て嫌そうな顔をする。 「ばけもの」「ばけもの」「ばけもの」「ばけもの」 皆がイヴをそう呼んだ。 「ちが、イヴは、イヴ……は」「人じゃない」 「人じゃない」「人じゃない」「ばけもの」「人じゃない」 やめてほしくて、 「きいて……ちが、うの……」 手を伸ばす。 「お 前は」 「生まれ ては「い け なかっ た 」 ──グシャァッ!! 伸ばした手は誰かを傷付けて、血が沢山かかった。温かくて気持ち悪くて、怖くて。 「 ほら」誰か の「手 を握る こ とも」で きない 」でしょ う? 聴きたくない。 助けて、 いやだよ、こんなの。 「うぁ゛ア」 涙を流す時も魔物みたいに怖い声になっちゃったけど、イヴは人間だよ。 「災 いだ」「魔 王だ 」 皆がイヴを「殺 さ れる ぞ」いじめるの。 やめて。 みんなと同じがいい。 「イヴはにンげんダよ。待ッテよ」 囲んでいた人達が逃げていくのが悲しくて、泣きながら追い掛ける。 手を伸ばすと、皆の背中を爪が引き裂いた。 また景色が真っ赤になった。 行かないで欲しかった。一人にしないで欲しい。 「マっ、て……みんな」 お」 前『は幸 せ」に「はな 「れな い』 「 全 てを 』滅「 ぼす『運」命 だ『」 「違う、いやダよ……助けて、」 身体が勝手に動いて、逃げていく人達の手を掴もうとする。 潰したり刺したり引き裂いたり、こんなことしたい訳じゃないのに、止まらなくて。もう、手も真っ赤になって。 「カルラ……!!」 思わず、名前を呼んだ。 イヴが自分を止められなくなったときも、ルキが変わってしまったときも、カルラは真っ直ぐに助けようとしてくれたから。 だから、心の何処かでまたカルラが助けに来てくれるんじゃないかなって、守ってくれるんじゃないかと思ってしまって。 「イヴっち見ーっけwwwwどしたんwwww話聞こかwwwwww」 そう思ったら、やっぱりカルラは来てくれた。
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