18.こっちを立てればあっちが立たず

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─ 神殿に行った日から3日経った。 イヴは最近、博士の研究をお手伝いしたりして過ごしてる。本当はカルラと居たかったけど、ずっとカノンとししょーの所にいるから一緒にいられない。 「イヴ、そこの棚の薬品を出しておいてくれたまえ。下から二段目、左から2つだ」 「わかった」 博士のお手伝いも嫌いじゃないけど、今はカルラと居たかったな。 「やはりこの世界の生物は面白い。心臓が無くとも魔核(コア)があればそれなりに動く」 「じゃあ、心臓いらない?」 「そういう訳にはいかないがこの魔核という臓器はあらゆる機能を補ってくれるもちろん、万全ではないがね。 ダレインくんの造ったアルファという個体がまさにそれだろう。本来なら死亡して然るべき状態だというのに、魔力とは正に超汎用性エネルギーと言える」 難しいことはわかんないけど、なんかすごい。 そう思っていると、リビングのほうがちょっとだけ騒がしくなった。なんだろう?と思っていると、ターニャが入ってきた。 「失礼します、リンドウ様、イヴ様。国王より緊急の招集が掛かりました。使者の方がお見えです」 「やれやれ⋯⋯後少しで起動実験だというのにタイミングの悪い」 「カルラ達もよぶ?」 「いや、彼らは別で動くだろう。アビスの本拠地へ攻め込む予定があるらしい」 博士は実験道具を片付けて溜息を吐くと、イヴの肩をポンって触る。 「行こうか」 「うん⋯⋯カルラ達にも言ってきていい?」 「そうだね、任せるよ」 イヴは、カルラ達のいる林に走った。 遠くからでも聞こえる鈍い音とか雷の光が見えるから、すぐにわかる。 「カルラ」 「お、どしたんイヴっちwww」 「王様から、お呼び出し」 カルラにそう言うと、チラッとカノンとししょーの方を見る。 「悪い、イヴっち。カノンたんの修行を今日で仕上げなきゃいけないんだ。リンドウ達と先に行ってきてくれ」 「⋯⋯わかった」 全部わかってたけど、なんだかカルラを取られてしまったみたいで悲しい。いつもそんな顔しないのに、カノンの事になると真剣になるのも。 そう考えると、少し胸がチクッとしてモヤモヤしちゃう。 「心配しなくてもちゃんと戦いますよwww後で助けに行きますってばよお嬢さんwwww」 「うん」 なんでこんな事で悲しくなるのか、イヴにはわからない。考えないようにしたくて、博士のところへ走って戻った。
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