その声に歌と約束を乗せて

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詠の言葉に2人は驚くと「えーーー!!??」と同時に不満の声を上げ詠は驚いた。 「その低い声がいいんじゃないですか!!かっこいい歌姫がいても良いと思いますよ!」 「日和の言う通りだ!低いから綺麗じゃない訳ではない!その素敵なかっこいい歌声を劇場内に響かせようじゃないか!!」 「お前ら……」 隼人と日和の顔を交互に見てから詠はフッと吹き出すと大声で笑い出し、ひとしきり笑うとニヤリと自信たっぷりな笑みを見せてきた。 「主役の座を奪うくらいやってやるよ」 「それって…つまり…!」 「ああ、歌姫やるよ」 詠の言葉に隼人と日和は抱きしめあって喜ぶとすぐに日和は離れて「じゃあ座長さんに言ってくるね!!」と走って出て行ってしまい、行動の速さに隼人も詠も少し引いていたがクスクス笑い出した。 それからは詠が歌姫の役の練習をしたが、もうほぼ完璧にこなしていて隼人の心はドキドキとワクワクが混ざり合っていた。 (やっと…やっとだ…!あの時の約束が…!) こうして無事に初日を迎えた劇団『Special World』の舞台は大盛況で、連日客席はほぼ満席だった。 今回の主演、隼人の演技は大人顔負けの上手さで何をやっても上手くいかない青年の役を演じていた。だが隼人の演技をもっと良くしているのが詠が演じる歌姫の存在だった。 初めて一緒に立った舞台だが2人の息はピッタリで昔から一緒にやっていたんじゃないかと思うくらい良い舞台になっていた。 こうして無事何事もなく千秋楽を迎え、幕を閉じたのであった。 「お疲れ様ぁー!!!」 劇団『Special World』の劇団員でお疲れ様会をやっていると隼人と日和は部屋の隅でジュースを飲む詠に近づいた。 「お疲れ様だ!詠!」 「ああ、お疲れ」 「詠さんやっぱり凄かったです!あとお兄ちゃんとの約束叶えてくれてありがとうございます!」 頭を下げながら言ってきた日和の言葉に詠はきょとんとしていたが、すぐに笑みを浮かべた。 「ああ、そういや約束していたな…10年前に、一緒の舞台に立とうって」 「覚えてなかったのか!?」 「途中で思い出したんだよ、お前達こんな小さかったのに…」 そう言う詠は親指と人差し指で数ミリ開けた隙間を見せてきて、それを見た隼人が「そんなに小さくなーい!」とすぐにツッコミを入れると日和が笑い出して、続けて詠も笑いだした。そんな2人を見て隼人は照れてしまった。 「さてと、じゃあ次はこっちの約束を果たしてもらおうか」 笑い終わった後にニッと口角を上げて言ってきた詠の言葉に隼人も日和も首を傾げた。
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