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期待していた答えとは違っていて、私は何も言えなかった。その時の麻里奈の表情はよく覚えていない……。あまりにも衝撃的で言葉にならなくて、浮かれていた私は時が止まってしまったかのように、何も考えられなくなった。
「おめでとう。じゃあね」
麻里奈はそう言って私に背中を向けて、母親と一緒に正門の方へ歩き出した。私は肩を落とした麻里奈の後ろ姿を、無言で見送るしかなかった。
塾でのテストも、順位を抜きつ抜かれつしながら、次は負けないよと一緒に頑張ってきた麻里奈。当然のように、麻里奈も合格して同じ青崎高校に一緒に行けると思っていた。
「麻里奈ちゃん、残念だったね。受かる人もいれば、落ちる人もいるんだから仕方ないよ」
お母さんはそう言って入学手続きを促して、体育館へ入っていった。
私は麻里奈が人一倍努力していたことを知っている。そして誰よりもこの高校に入学したかったことも知っている。一緒に合格しようと約束したのに、私だけ合格してしまった。合格は嬉しいけど、麻里奈のことを思うと手放しで喜べなくて、複雑な心境だった。
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