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「菜々」
私も帰ろうとしていたけど、麻里奈に引き止められた。
「ごめんね。一緒に青崎行こうねって約束してたのに」
そう言って麻里奈は作り笑いで話しかけてきた。私は言葉に詰まって首だけ横に振った。
緊張する。さっきまでみんなと一緒に話していたのに、急に気まずい空気が漂う。
「頑張ったけど、仕方ないよね。結果出ちゃったからね。私は受け入れてるよ」
「うん……」
麻里奈の口調に迷いはなかった。
「菜々が合格できて良かった。私に遠慮することないからね。菜々には青崎で頑張ってほしい」
真っ直ぐ向かってくる麻里奈の視線は温かく、言葉も私に真っ直ぐ刺さった。
「ありがとう。麻里奈も頑張って」
解けた緊張感と安堵で、目元が潤んだ。そんな私を見て、麻里奈も安堵の笑みを浮かべた。
「菜々のことだから、自分だけ合格したことを後ろめたく思ってるんじゃないかなって」
「あはは……」
バレてる。それだけお互いのことをよく分かっている仲ということだ。
「私ね、お父さんに『かわいそうに』って言われたんだよね」
「え……」
俯いていた麻里奈は、そのまま話を続けた。
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