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8.
ところでだが、争いの後に残った破壊活動の爪痕は、例外なく、見る者の心を虚しくする。
お互いの物を投げ散らかしたせいで、足の踏み場もない状態になっている自分達の部屋を、十和子と美加子はこれから片付けなければならなかった。
ため息をつきながら、美加子は自分が投げた十和子の雑誌を拾い上げた。
「ん?何これ」
数冊の雑誌の下に、しなびたニンジンが、押しつぶされるようにして埋まっていた。
「何でこんなところにニンジンがあるの?」
「このしなび具合からすると、一週間以上は経ってるね」
二人のうちのどちらかが、何らかの理由で、台所からこの部屋に持ってきて、そのまま忘れていたのだろうか。
十和子も美加子も、自分がしたことなのかどうか、思い出せなかった。
二人して、拾い上げたニンジンをじろじろと観察する。
「でも、しなびてはいるけど、まだ食べられそうね」
「腐ってはいないからね」
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