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とある所に腕のいい庭師がおりました。
その庭師は地主の庭の木の手入れ中に
誤って鳩の羽を切ってしまいました。
羽を切られた鳩は枝から足を滑らせ地面に向かってクルクルと落ちて行きました。地面に落ちた鳩は、悲しそうな鳴き声をあげながら羽をバタつかせていました
小さな足をピクリと動かす鳩を不憫に思った庭師は作業の手を止め木に立てかけていた梯子を降りていきました。切られた部位から血を流し暴れている鳩をしばらく眺めた後、庭師は剪定バサミを広げ残っている羽の付け根にあてがいました。
「羽が片方ないというのは人間で言えば片腕がないのと同じだよなぁ。不便だろうなぁ」庭師の男はそう呟きながら勢いよく残った羽をちょん切りました。
残りの羽を切ってあげれば馬鹿みたいに地面を這いつくばらずにすむと思ったからです。
両の羽を切られた鳩は血を流しながら鳴きました。
その鳴き声があまりに大きいので家主が出て来てどうしたのか?と庭師に尋ねました。
庭師は事の次第を話しました。
「この鳩は旦那様の植木の枝の中に隠れておりまして、剪定中に不運にも怪我をしてしまい植木から落っこちてしまったものですから、助けようとしたのですが、生憎、残った羽をバタつかせ暴れ回るものですから、暴れて傷口から出血が酷くならぬよう、もう片方の羽を切り落とした次第でございます」
「お前さんはそんな理由で鳩の羽を切ったのかい?」
「へい。それもございますが、片方の羽がないのは鳩にとっても不憫でなりません。人でいうなら片腕だけになったという事でしょう?そうなると不便ではありませぬか?」
「事故で失ったのは仕方がないが、そんな事をしたら死んでしまうではないか」
「ですが、片方だけでは血が流れ出しどのみち死んでしまうでしょう。ですからそうならぬよう処置をしたまででございます」
「その処置は鳩の死をより早く招くと考えはしなかったのかい?」
「へい。あっしは最良の処置をしたと思っておりますが…旦那様、何か問題でもありましょうか?」
家主は溜息をつきました。
「とにかく、可愛そうだからその木の下に埋めてやってくれ」
「旦那、埋めるなんてとんでもありません。そんな事をしたらこの立派な松の木台無しでさぁ。根が鳩の血なんかを吸ったら立派な枝木がどす黒くなっちまう」
それを聞いた旦那は苦虫を噛み潰したような顔を浮かべました。
「旦那様、最近はカラスのせいで農作物の被害が出ていると聞いております。それは本当の話でございますでしょうか?」
「そなたの言う通りだよ」
「ならば…」
庭師はそういうと辛うじて息をしている鳩をチョッキンチョッキンと、細かく切っていきました。
「これで少しはカラスからの被害を免れるやもしれません」
庭師は細かく切断したバラバラになった鳩をみていいました。
「これでカラスも食べやすいってもんじゃねーですか。ねぇ旦那?」
旦那は青ざめた顔で庭師にいいました。
「もう庭の手入れはいいから、帰っておくれ
給金は後でデッチに持っていかすから」
そう言って庭師を追い返しました。
それから数日も経たないうちに、庭師の悪い噂が町中に広がっていきました。庭師はどうしてそのような悪い噂がされているのか、わかりませんでした。そのせいでか仕事の依頼も減り、数日のうちにピタリと仕事が来なくなりました。その日の飯にもありつけないほど、貧乏になるのはあっという間でした。
「きっとあの地主が良からぬ噂を流したせいでこんな風に貧乏になったにちげえねぇ」
庭師は夜を待って地主の家にいきました。
塀に梯子を立てかけ壁を越え家に入り込みました。
忍び足で母屋に入ると最初にデッチの部屋に忍び込み、寝ているデッチの両目に向けて剪定バサミを突き下ろしました。悲鳴をあげるデッチの身体の上に膝を押しつけ口に手ぬぐいを押し込みました。そして両手で首を絞めました。
デッチの悲鳴のせいでしょうか?母屋の奥でロウソクの火が灯ったのが障子越しに見えました。
「奥さまか旦那様だろう」
庭師は思い剪定バサミを抜き取り血に汚れたハサミをデッチの衣服で拭き取りました。
部屋を出るとロウソクを片手に持ち廊下を歩く奥さまと鉢合わせました。
庭師は笑みを浮かべながら
「久しゅうございます」と言いました。
奥さまは短い悲鳴をあげ、ロウソクを落としてしまいました。
いきなり庭師と出会した事に驚いたのか、
返り血を浴びた庭師の姿に驚いたのか、
庭師自身はわかりませんでした。
「そんなに驚かないで下さいまし」庭師はいい、剪定バサミを振り上げ奥さまの頭めがけ振り下ろしました。
前から崩れ落ちた奥さまは顔面を床に激しく打ち付けました。
庭師はその上に馬乗りになり剪定バサミを首に
あてがい、首を切り落とそうとしました。
「鳩のようにはいかぬなぁ」
幾ら力を込めても奥さまの首を切り落とすことは出来ませんでした。
仕方なく諦めた庭師は切り落とすのは後にしようと考えました。
そして未だ寝静まっている旦那な寝床に忍び込み、布団の上からハサミを突き刺しました。何度も何度も突き刺しました。動かなくなったのを見て布団を剥がした庭師は衣服を剥ぎ取り旦那様の腹を切り裂きました。内臓を少しばかり引っ張りだしました。
「こうしない事にはカラスも上手く食えやしねぇよなぁ」
そして庭師は旦那を部屋から庭へと引きずりだし大の字の姿勢で寝かせました。
「あれま、旦那様。まだまだ生きていらっしゃるのですかい?」
庭師は言い旦那様の手首にハサミあて、切り落としました。残りの手足も切り落とします。
にもかかわらず旦那まだ僅かばかり動いていました。
「ねぇ旦那、そんなに動いちゃ死んじまうじゃねーですか」庭師は動きの悪くなった旦那の首にハサミを入れました。手足等違って切断には少しばかり苦労しましたが、奥さまと違い無事、切断する事が出来ました。
それが終わると旦那の家族やデッチも細かく切断し庭へとばら撒きました。
「これでいいや 明日になりゃカラスが全部食ってくれるに違いねぇ」庭師はいい、その後、金品を強奪して家路に戻って行きました。
終わり
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