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痛いくらい蹴られるお腹をおさえながら、泳ぐ一成を見る・・・。 夏生さんには“最後の瞬間まで”と言ったけれど・・・ これは・・・ 「行きますね、世界・・・。」 「だよね? 凄い旦那掴まえたね、旦那から?」 「そうなのかな・・・。 急にプロポーズをされたので、念の為2ヶ月間付き合って貰ったんです。」 急だった・・・。 私からしてみたら、凄い急だった。 だって、“お母さん”なんだと思っていたから・・・。 だから、いつも追い付かれて、追い抜かれていると思っていた。 でもそうじゃなくて・・・一成は、私を追い続けていた・・・。 そろそろ、一成がゴールをする・・・。 誰よりも速い一成が、ゴールをする・・・。 一成のおじいちゃん、天国から見ていますか・・・? お酒を飲みながら、見ていますか・・・? おじいちゃんにソックリの一成が、世界に行きます・・・。 蹴り続けている一成と私の赤ちゃんを、お腹の上から撫でる・・・。 「大吉、お父さん・・・1番速かったよ・・・。」 1着でゴールをして、普通はすぐにタイムを確認するのに・・・ 一成はすぐに、私が座っている方を見た。 そんな一成に、私は笑い掛ける。 続いていく・・・。 人生は・・・。 人生は続いていく・・・。 急にプロポーズをされて、念の為付き合うのに付き合って貰った2ヶ月間・・・。 その先に、一成と私の続きがあるのかと思っていたら・・・ もう1つ・・・ 大吉も、私達の人生のレーンに来てくれた・・・。 この子が自分のレーンで1人で泳ぐその時まで、このレーンで3人で泳いでいく・・・。 進もう・・・ 先に・・・ 進もう・・・ 前に・・・ 3人で、進んでいこう・・・。 「瑠美!!!速過ぎてまだ追い付けない!!!」 私が座る観客席の下から、一成が叫んだ。 あんなに速いのに、まだまだ追い付かないみたい。 end.........
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