12

15/17
前へ
/276ページ
次へ
他の選手達と同じように、一成も飛び込み台に上がる。 上がった後、またプールの向こう側を見て・・・ 飛び込みの態勢に・・・。 選手達の動きが、制止する・・・。 この時、時間は止まっている・・・。 選手達の時間は、止まっている・・・。 そして、動き出す・・・。 動き出す・・・。 スタートの合図とともに・・・。 プールの水の中に飛び込み、泳ぎ始める・・・。 泳ぎ始める・・・。 プールの水の中を・・・。 でも、一成は水の中だけじゃない・・・。 泳いでいる・・・。 人生のレーンを、泳いでいる・・・。 一成の競泳本格復帰の報道により、多くのアスリートやスポーツ団体、企業から、”一般社団法人KONDOアスリートサポート支援”に寄付がされている。 その寄付により、故障したアスリートをサポートする充実した環境が整えられ、“KONDO”の企業としての知名度もイメージも上がった。 そんな“KONDO”の社員として・・・ “KONDO”が再スタートさせたアスリートとして、一成が泳ぐ。 「速~・・・」 夏生さんに言われ、私も頷く。 「旦那、オリンピックいくね。」 「まだ・・・最後の瞬間まで。 泳ぎきるその瞬間まで、瞬き1回の世界の勝負だから。」 「世界で闘えるアスリートの奥さん、だね。 お腹、大丈夫?」 お腹をおさえている私に夏生さんが心配してくれている。 「大吉がすっごい蹴ってて・・・!」 「大吉?」 「男の子なの、一成のおじいちゃんと同じ名前にするって・・・。」 蹴って応援してくれているのか、一緒に泳いでくれているのか、大吉が私のお腹を蹴りまくっている。
/276ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1595人が本棚に入れています
本棚に追加