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他の選手達と同じように、一成も飛び込み台に上がる。
上がった後、またプールの向こう側を見て・・・
飛び込みの態勢に・・・。
選手達の動きが、制止する・・・。
この時、時間は止まっている・・・。
選手達の時間は、止まっている・・・。
そして、動き出す・・・。
動き出す・・・。
スタートの合図とともに・・・。
プールの水の中に飛び込み、泳ぎ始める・・・。
泳ぎ始める・・・。
プールの水の中を・・・。
でも、一成は水の中だけじゃない・・・。
泳いでいる・・・。
人生のレーンを、泳いでいる・・・。
一成の競泳本格復帰の報道により、多くのアスリートやスポーツ団体、企業から、”一般社団法人KONDOアスリートサポート支援”に寄付がされている。
その寄付により、故障したアスリートをサポートする充実した環境が整えられ、“KONDO”の企業としての知名度もイメージも上がった。
そんな“KONDO”の社員として・・・
“KONDO”が再スタートさせたアスリートとして、一成が泳ぐ。
「速~・・・」
夏生さんに言われ、私も頷く。
「旦那、オリンピックいくね。」
「まだ・・・最後の瞬間まで。
泳ぎきるその瞬間まで、瞬き1回の世界の勝負だから。」
「世界で闘えるアスリートの奥さん、だね。
お腹、大丈夫?」
お腹をおさえている私に夏生さんが心配してくれている。
「大吉がすっごい蹴ってて・・・!」
「大吉?」
「男の子なの、一成のおじいちゃんと同じ名前にするって・・・。」
蹴って応援してくれているのか、一緒に泳いでくれているのか、大吉が私のお腹を蹴りまくっている。
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