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悠斗が堀川ゆいと別れたのは、それから3日後のことだった。
あんなに好き好きセックスしたいと言っていたのに、どういう心境の変化なのだろうか。
悠斗はその晩、俺の部屋に来た。
「しんちゃん」
「どうしたんだ?」
「俺、しんちゃんが好きだ」
「うんうん、わかってる」
「そうじゃなくて!」
「ん?」
「その、女の子にするみたいに、しんちゃんとセックスしたい」
「……は?」
俺はたっぷり30秒かかって声を出した。
悠斗が何をしたいって?
俺の思考は止まってしまった。
「ごめん、気持ち悪いよね。でも、俺、気づいた。ずっと
しんちゃんのこと好きだったんだって」
「いや、それは〈友だち〉として、だろ?」
「ううん、しんちゃんにキスしたとき、心臓がドキドキして、他の女の子とするときと違ってた。家に帰ってからもドキドキが止まらなくて、自慰した」
自慰行為を恥ずかしげもなく公言する悠斗は、しかし真剣だった。
「俺、しんちゃんが好きだ」
ここで「俺も好きだった」と言えば、ハッピーエンドになるのか?
いいや、否定しよう。
悠斗の気持ちは勘違いだ。
「悠斗、おまえは男より女の子が好きだろう?その気持ちは勘違いだよ」
「女の子は柔らかくて好き。でもそれ以上に俺はしんちゃんが好きなんだ」
イケメンが迫ってくる。
俺の身体を組み敷いて、噛み付くようにキスをする。
「セックス、しよ」
切羽詰まった声だった。
これはやばい。
俺はあせった。
「待て待て待て」
「待てないよ、もう。俺が我慢嫌いなの知ってるでしょ?」
「だからって、無理強いはよくないぞ?」
「無理強いなの、これ?」
悠斗が俺の股間に触る。わずかにふくらんでいた。
(何反応してんだ、俺の身体!!!)
俺は必死になって、悠斗を止めた。
だが、無理だった。
セックスに関して百戦錬磨の悠斗にかなうはずもなく、俺は見事に撃沈したのである。
すべてが終わったあと、悠斗は機嫌よく「これで恋人同士だね」なんて笑って、自分が着けていたシルバーのブレスレットを俺の手首につけて、満足げに頷いた。
「しんちゃん、大好き」
と、言い含めて。
俺はため息だけしか出なかった。
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