流れ星の燈

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私は、クラスから抹消された存在なのに。 そうだ、夏祭りなんてものに行ってしまったら、クラスメイトと鉢合わせてしまう。 良かった。先輩から誘われなくて。 良かった。 、、、、よかった。 指先がツンと冷たくなった気がして、ギュッと握り締めた。 この胸の中にあるざわつきが止まれば、目の前にいる彼にまた笑いかけて話せる。 なのに、今はただ、前だけを見て歩んで行く彼の背後を歩くのが、とても不快になった。 みんなと仲良くしてる先輩が、少し妬ましいと思った。 「、、、いいな、イケメンって」 彼には聞こえないように、声を絞った言葉を吐き出した。 心の中に溜めておきたくなくて、吐き出したそれは、私の存在を醜くさせていく気がした。 「ん?なんか言った??」 高く積み上げられた階段で歩みを止め、彼は草木を払うようにこちらを振り返り見た。 気まずさで顔がこわばったが、得意の愛想笑いを浮かべる。 「んんっ!じゃあ、イカ焼き、あ!あと広島焼きのお土産頼みます!」 「えぇ、そんなにー?というか、どっちもその場で食べるからこそ美味しいやつじゃないの?」 彼は眉根を下げながら腰に手を当てて首を傾げる素振りをみせた。 だって、仕方ないじゃん。 先輩は他の友達と遊びに行くんだから。 「いいんですー」 両手を突き出し、彼の腰を持ち上げるように押してあげた。 今の私は醜くて、情けなくて、嫌な奴になっている。 こんな顔している私を見られたくなんかない。 「じゃあさ」 押していた私の手の上に手をぽんと置かれた。 ほんのり冷たい彼の手だけど、置かれているうちにあたたかくなって、その体温のあたたかさに赤面した。 「君も来なよ」 「へ?」 なんてことないように先輩がそう言って、その幸薄い笑顔で言うのだ。 「途中抜け出して、ここで待ち合わせしよ。 そしたら出来立ての広島焼きもイカ焼きも食べれるよ。ここからなら、花火もよく見えて、ゆっくり天体観測も出来るでしょ」 それって。 「2人で、、、ってことですか?」 「え、クラスメイトをここに呼ぶのはヤダ。 あんまり騒がしいのは苦手だしね。 みんなに合わせてもらうのも気が引けるし、みんなのペースに合わせる僕も辛いから。 君とならゆっくり天体観測できるし、ここは静かで、空気も綺麗。 ここは僕にとって酸素みたいなものだから、定期的に来なきゃ、酸素不足で死んじゃうんだよ」 そんなの、まるでデートみたいじゃない。
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