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「あれは期間限定の桃トロピカルシェイクを飲んでみたかったから、少しもらっただけだよ。私にとって山口くんはただの友達」
「でもあれ、間接キス……だよね」
「それじゃあ、こうすればいいの?」
彼女はおもむろに僕のコーラを手に取ると、チューと吸ってみせた。
「ほら、これで君とも間接キスだよ? はい、どうぞ」彼女はコーラを僕に戻した。
「え、これをどうしろと」
「君が失くした『恋』とやらをたくさんつけておいてあげたから、それを飲めば心が戻ってくるんじゃない?」
僕はおそるおそる紙コップを手に取ると、ストローに口をつけて吸い込んでみた。
甘い香りと炭酸の刺激が喉に伝わると、胸はドキドキと鼓動を始め、体中に忘れていた心の躍動が広がっていくような感覚を覚えた。
何故か涙が溢れて、ぬるい雫がプラスチックの蓋の上にポタリと垂れた。
「ああ、心が戻ってきたみたいだ。やっぱり犯人は……君だったんだね、ワトソンくん」
「ホームズさん、事件は解決できたかな? でももうひとつ解決してほしい事件があるんだけどなあ」
「んん、それは何かな?」
「どうやら私の心を奪った奴もいるみたいなの。そいつも捕まえてくれるかな?」
僕はハンバーガーを頬張ると、食べかけのハンバーガーを彼女に渡した。
「はい、これあげるよ。僕のおごり」
「ええ? これを食べるの?」
「犯人捜しの手がかりになるかもしれないからね。今の僕はすごく冴えているんだ」
「私、辛いの超苦手なんだけど……知らなかった?」
君のことはよく知っている、これはお返しだ。
ボクのココロをうばったキミを
——ゆるさないぞ
❤︎
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