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マーシャは戸口を大きく開いて身を乗り出すように家の真下――大木の根元を覗き込んだ。朦々と白い煙が上がり始めている。いつ、その中心から橙色の炎が生まれても不思議ではない状況だ。
マーシャは建てたばかりの家と共に激しく荒れ狂う炎に焼かれる自分の姿を想像して悲鳴を上げた。
「分かったわよ! 行くわ。貴方たちの王のもとに行くわよ‼」
こうして白旗を上げたマーシャは、兵士たちに剣先を突き付けられながらキャメロットの城へと向かうこととなったのだ。
(……だけど、解せないわね)
マーシャは昨日この地に着いたばかりだ。こんなにも早く王がマーシャの存在を知り、丁重に招かれれば応じるつもりのある者をわざわざ捕えるために大勢の兵士を寄越してくるなんて……。
おそらく王はマーシャがキャメロットにやってくるのを今か今かと待ち構えていて、何らかの強い思いを抱いていて確実に捕えるつもりでいたのだ。
それほどの恨みを買っていたことに戸惑いを抱くと同時に、マーシャにはまったく身に覚えがないため、その理由が気になってくる。
(誤解があるのかもしれないわ。とにかく、王に会ってみなくっちゃ)
森を出ると、緩やかな高低差のある草地が広がっている。登っては下りてを繰り返すそれはまるで緑色の海原だ。草地を分断するように大きな河があり、その穏やかな流れに添うように城壁が見えた。
城壁の内側は、街だ。その中心は小高い丘となっていて、高い城塞が取り囲んでいる。城塞のさらに上空には尖塔がいくつも見えた。
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