1.青年王は美形につき、お断り

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「メルディンの弟子、マーシャを王の相談役として城に招く。以後、マーシャはキャメロットから出ることを禁じる」 「はぁ~?」  青天の霹靂とはまさにこのことだ。マーシャは唖然として青年王を仰ぎ見た。 「誰が何? 何を禁じるですって?」 「マーシャ、お前を俺の相談役に任じる。この城で暮らし、この街から出て行くな。以上」 「はぁいぃぃ~? えっ、なんで? なんでそうなるの? どうして? わけが分からないっ‼」  思わず荒げた声は、マーシャが予期した以上に大きく響いて、自分の驚きが相当のものであることを自覚させる。  王の相談役。――実権はほぼないが、場合によっては王を諌める立場にあり、その言動はけして軽視されてはならない高い地位にある。  マーシャたちドルイド(オークの賢者)が国王に招かれて相談役になることは度々あることだった。賢者を従えた王には、王としての箔が付くからだ。  どこかの国の王が賢者を迎える度に、どこそこの国の王には賢者がいるが、どこそこの国の王にはまだいない、などといった噂が一瞬にして広まる。 そして、王に迎えられた賢者が優秀であればあるほど、他国はその国を恐れ、侵略しようなどといった不埒な考えを捨てるのだった。  そうした故あって、流れ者のマーシャはどこの国に行き着いても歓迎され、歓迎されなくとも酷い扱いをされずに済んでいたのである。  ところで、豊かな緑に囲まれながらの気まま暮らしを好むドルイドたちにとって、いくら高い地位を貰えるのだとしても、人間社会に組み込まれることは不本意なことだ。
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