53人が本棚に入れています
本棚に追加
/258ページ
「どうしてあたしなの? もっと優秀なドルイドがいるわ。あたしの師匠や兄さんたちを紹介してもいい」
プラチナブロンドが左右に揺れる。
「お前がいい。お前でなければダメだ」
「だから、どうして?」
青年王は押し黙った。なぜそこで黙るのだ。じれったい。三年もかけてマーシャの行方を追い、マーシャがキャメロットにやってくるのを待ち構えて捕らえたくせに。
そうせずにはいられない想いがあるはずなのになぜそれを言おうとせずにマーシャをただひたすら理不尽に縛り付けようとするのだろう。
(そんなに恨んでるの?)
いや、違う。そうまでして執念深くマーシャを恨んでいるのだとしたなら、相談役として常に傍に置こうとするだろうか。マーシャの顔を見たとたん、その首に剣を突き付けていたはずだ。
実力を認められているわけでもない若い王が、これまでにどんな苦労と困難を重ねてきたのか想像するに易い。だが、だからと言って、自分を王にした――と彼は考えている――マーシャのことを憎んでいるようには見えなかった。
マーシャは青年王を見つめながら両手を腰に添えて首を傾げる。
「あたしのことを恨んでいるわけではないのよね?」
「恨む?」
「貴方に玉座を押し付けておいて、自分は自由に旅をしているから……?」
さらに首を傾げながら尋ねて、違うのだとマーシャは確信を得た。
(――だとすると、彼のこの執着心は、いったい何なの?)
最初のコメントを投稿しよう!