1.青年王は美形につき、お断り

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 他国や諸侯たちの干渉を退けたくて賢者を欲しているのであれば、それこそマーシャのようなドルイダスよりも、いかにも知識を蓄えていそうな老齢なドルイドの方が良いに決まっている。  マーシャでなければならない理由が、いったいどこにあると言うのか。 (分からない)  けれど、もはやマーシャには、目の前で悲痛な表情を浮かべ玉座に座る青年に、何の言葉もかけずに去ることができなくなっていた。 「譲歩してあげる。だから、貴方も一歩ゆずって。あたしはしばらくキャメロットに留まる予定だから、その間は貴方と揉めたくないわ。貴方の望み通り相談役を引き受けてあげる。でも、あたしがキャメロットを去る時は絶対に引き止めないで」 「いつ、キャメロットを去る?」 「探している人がいるって言ったでしょ? その人が見つかるまでか、もしくは、キャメロットにはいないと分かるまで。そうね、だいたい一年か二年くらいかしら」 「そんな短い期間しかいない相談役に意味などあるものか。ドルイダスを失った王と嘲りを受ける上に、そのような王が治める国だと軽んじられ、キャメロットが侵略を受けることになる」 「そっかぁ」  マーシャは視線を漂わせながら、おずおずと頷いた。彼の言うことにも一理ある。十分に起こり得ることだった。 「それなら、あたしに人を預けて。ひとりね。なるべく賢そうな人がいいわ。その人を弟子として迎えて、ドルイドにする――とまでは行かなくとも、それなりの知識を与えるまでちゃんと面倒を見るから」 「弟子がドルイドの知識を物にするまではキャメロットを離れないと言うのだな」
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