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『だって、マーシャが僕のご飯を忘れて家を建てるのに夢中になっているから。だから、僕が自分でどうにかしなくっちゃって思ったんだ』
ひと気がなく静かな森に甲高く響いた幼い男の子の声は、猫の口から聞えてきたものだった。
『小鳥を捕まえて食べてやろうと思ったんだけど、あいつらすばしっこくって。今度こそ捕まえたと思って飛び掛かったのに、目の前をバタバタ飛んで行くんだ。本当にあともう少しで捕まえられたのに。だから、次こそは捕まえるぞ、次こそは……って』
「追い回すのに夢中になってしまったのね」
『うん。それで、気が付いたらマーシャがいなくなってたんだ。いったいどこに行っていたの?』
「ちょっとね」
マーシャはビリーを肩に担ぐと、ふわりと空に浮かぶ。羽毛が風に吹かれて舞い上がるように、ゆっくりと上昇していき、オークの木の上に建てた家の戸口の前で降り立った。
家の中は、今朝飛び出して行ったままの状態に保たれていた。飲み掛けのハーブティーがテーブルの上に放置されている。すっかり冷めてしまっているが、これはこれで飲めなくもないので、マーシャはテーブルの脇を素通りしてキッチンに向かった。
マーシャの家は、外観に反して中は想像を越えて広い。戸口から入ると、奥に広い部屋となっている。
すぐに目に付くものは、部屋の中央に置かれた大きなテーブルだ。それから、森を見渡せる窓辺に置かれた揺り椅子。窓のある側とは反対側の壁は、一面が本棚になっていて、童話から歴史書、図鑑まで、ありとあらゆる本をコレクションしており、棚に入りきらなかった本たちは中央のテーブルに積み重ねてある。
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